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2026/06/10 お知らせ

「夫婦関係は終わっている」と聞いていたのに慰謝料を請求された―不貞慰謝料の判断フローと3つの防御ポイント

離婚

「夫婦関係は終わっている」と聞いていたのに慰謝料を請求された
不貞慰謝料の判断フローと3つの防御ポイント

公開日:2026年6月12日 監修:弁護士法人市ヶ谷板橋法律事務所
交際を始める前に「夫婦関係はもう終わっている」と告げられていた。それを信じて交際を続けていたところ、突然配偶者から不貞慰謝料を請求されてしまった。そのような状況に置かれても、請求を受けた段階で諦める必要はありません。令和8年6月5日、最高裁判所は不貞慰謝料の判断枠組みを明確にした重要な判決を下しました。本記事では、その判決が示した判断フローに沿って、請求された側が知っておくべき3つの防御ポイントを解説します。

1 不貞慰謝料の判断フロー(全体像)

はじめに、「不貞慰謝料」と「離婚慰謝料」は法律上の請求の根拠(訴訟物)が異なる点を確認しておきます。

不貞慰謝料
不貞行為そのものによる精神的損害への賠償
または
離婚慰謝料
夫婦を離婚させたことを理由とする賠償

不貞慰謝料は婚姻関係がその当時すでに破綻していた場合は原則として不法行為責任を負いません(最高裁平成8年3月26日判決)。離婚慰謝料は、第三者が「夫婦を離婚させることを意図して婚姻関係に不当な干渉をした」という特段の事情がない限り請求できません(最高裁平成31年2月19日判決)。本記事では、請求されるケースが多い不貞慰謝料に絞って解説します。

令和8年判決が整理した判断フローは次のとおりです。フローの①〜③のいずれかで止められれば、慰謝料請求は認められません。


不貞慰謝料の判断フロー(令和8年6月5日最高裁判決に基づく)
このセクションのポイント
1 不貞慰謝料と離婚慰謝料は訴訟物が別。本記事は不貞慰謝料(不貞行為そのものによる慰謝料)に絞って解説する。
2 判断フローの①〜③のいずれかで止められれば請求は認められない。肉体関係があった場合でも諦める必要はない。
3 令和8年最高裁判決は「破綻していたと信じることへの相当の理由」という論点を明確化した重要判例。

2 3つの防御ポイント

フロー①〜③の各段階で争える可能性があります。順に確認していきましょう。

防御① 肉体関係はあったか

不貞慰謝料を請求するためには、請求する側(配偶者)が肉体関係の存在を立証する必要があります。立証責任は請求された側ではなく、請求する側にあります。

実務では、ホテルの領収書・GPSの位置情報・メッセージのやり取り・探偵の調査報告書などが証拠として提出されることがあります。ただしこれらは間接証拠であり、「肉体関係があったことを証明するものか」という観点から個別に評価・反論する余地があります。安易に認めてしまう前に、証拠を弁護士に確認してもらうことをお勧めします。一度認めると撤回が難しくなるため、内容証明や訴状が届いた段階でまず弁護士に相談することが重要です。

防御①のポイント
1 立証責任は請求する側にある。「証明できないなら払え」という主張には応じる必要はない。
2 間接証拠の信用性は個別に争える。証拠の内容を弁護士に確認してもらうことが重要。
3 肉体関係を一度認めると撤回が難しくなる。内容証明・訴状が届いた段階ではまず弁護士へ。

防御② 婚姻関係は実際に破綻していたか

肉体関係があったと認定された場合でも、次の防御ポイントがあります。肉体関係をもった時点で婚姻関係がすでに破綻していた場合、相手方の認識を問わず請求は棄却されます(最高裁平成8年3月26日判決)。

重要なのは「破綻の時期」と「肉体関係をもった時期」の先後関係です。破綻が先であれば請求棄却、肉体関係が先であれば次の防御③の検討へと移ります。

破綻が肉体関係より前であれば、相手方の認識を問わず請求は棄却されます

防御③ 「破綻していた」と信じることへの相当の理由

今回の判決の核心がここです。実際には婚姻関係の破綻が認められない場合でも、交際相手とその配偶者の婚姻関係が「破綻していた」とあなたが信じたことに相当の理由があれば、過失がないとして請求は棄却されます。この理由が認められない場合にはじめて、不貞慰謝料請求を裁判所が認容する余地が生まれます。

原審(高松高等裁判所)は「離婚したと信じることへの相当の理由がなかった」という点だけを検討して請求を一部認容しました。しかし最高裁は、それだけで直ちに過失があるとすることはできず、「婚姻関係が破綻していたと信じ、かつそう信ずるについて相当の理由があったかどうか」も別途検討しなければならないと判示しました。原審がこの検討を行わなかった点を、最高裁は法令の解釈適用の誤りと判断しています。

相当の理由の認定は個別の事情を総合的に考慮するものです。例えば、以下のような事実が「婚姻関係の破綻をうかがわせる事実」として示されており、「婚姻関係の破綻を信じた相当の理由」の判断に影響し得る情報の参考例となります。

1 夫婦間の会話断絶・メールのみの関係
夫婦間の会話がほとんどなくなり、電子メールで用件を伝え合うのみとなっていた。日常的な夫婦の交流が実態として失われていることを示す事実。
2 離婚への合意・弁護士への相談など具体的準備
配偶者が離婚の意思を伝えて交際相手がこれを了承し、養育費について弁護士に相談に行く旨のメールが送られるなど、離婚に向けた具体的な準備が進んでいた。
3 離婚届の記入・交際相手からの実際の提示
離婚届の用紙を交際相手が自ら入手して記入し、あなたにその届を直接見せ、離婚の意思があることを伝えた。
※ 上記は令和8年判決の事案に基づく例示であり、この事実があれば必ず破綻が認定されるような絶対的な基準ではありません。相当の理由の認定は個別の事情によって異なります。
このセクションのポイント
1 防御①:立証責任は請求する側にある。間接証拠の信用性は個別に争える余地がある。
2 防御②:破綻が肉体関係より前であれば、認識を問わず請求は棄却される(平成8年判例)。
3 防御③:実際に破綻していなくても、破綻していたと信じることへの相当の理由があれば過失なし(令和8年判決の核心)。

3 請求された場合の初動対応

内容証明や訴状が届いた場合、次の4ステップで対応することをお勧めします。いずれのステップでも弁護士への早期相談が重要です。

1
請求の種類を確認する
届いた書類が不貞慰謝料の請求なのか、離婚慰謝料の請求なのかを確認します。それぞれ要件が異なるため、まず何を請求されているのかを把握することが対応の出発点になります。
2
時効を確認する
不貞慰謝料の請求権は、損害および加害者を知った時から3年で時効となります(民法724条)。すでに時効が成立している可能性がある場合は、弁護士に確認してください。
3
証拠を保全する
交際相手から「別居中」「離婚する」と告げられた際のメッセージ・メール、離婚届を見せられた際の状況など、相手から示された情報をすべて記録・保全してください。これらが防御②③において重要な証拠になります。
4
証拠をもとに対応方針を決定する
保全した証拠をもとに、フローの①〜③のどこで争えるかを弁護士と確認した上で対応方針を決めます。要求されるがままに支払ったり、感情的に相手方と直接交渉したりすることは避けてください。
このセクションのポイント
1 まず請求の種類(不貞慰謝料か離婚慰謝料か)と時効を確認する。
2 交際相手から示された情報(メール・離婚届等)を記録・保全することが防御の証拠になる。
3 自己判断での支払いや直接交渉は避け、弁護士と方針を確認してから行動する。

4 よくある質問(FAQ)

不貞行為によって慰謝料を請求されたら、まず何をしたらいいでしょうか?
A まず弁護士に相談し、請求の種類とフローのどこで争えるかを確認することが第一歩です。

慰謝料への対応は、請求の種類や不貞行為の事情等によって異なります。内容証明や訴状が届いた段階で自己判断で支払ったり、相手方と直接交渉したりすることは避けてください。どのような請求なのか・フローのどこで争えるかを確認することが、適切な対応の出発点となります。

慰謝料を請求されたとき、やってはいけないことはありますか?
A ①無視、②言われるがままの支払い、③相手方への直接交渉の3つは避けてください。

①請求を完全に無視すること(問題は解消されず、裁判で敗訴するリスクがあります)、②要求されるがままに支払うこと(争える余地があっても失われてしまう可能性があります)、③感情的に相手方へ直接反論・接触すること(状況がさらに悪化するリスクがあります)。いずれも状況を悪化させる恐れがありますので、まず弁護士にご相談ください。

慰謝料の相場はどれくらいですか?
A 婚姻関係の状況等により50万円〜300万円程度と幅が大きく、一概には言えません。

不貞相手の婚姻関係の状況・交際期間・不貞行為の期間・婚姻関係への影響度などによって大きく変わります。ご自身の状況での見通しは、弁護士に個別にご相談ください。

参考判例
平成8年
最高裁判所第三小法廷判決・平成8年3月26日(民集50巻4号993頁):婚姻関係破綻後の不貞行為について不法行為責任を否定した判例。
平成31年
最高裁判所第三小法廷判決・平成31年2月19日(民集73巻2号187頁):離婚慰謝料の「特段の事情」要件を示した判例。

まとめ

今回の最高裁判決によって、不貞慰謝料の判断枠組みが明確化されました。肉体関係がなければ慰謝料の請求が認められないのはもちろんですが、肉体関係をもったとき婚姻関係がすでに実態として破綻していた事実、そして破綻していなかったとしても「破綻していた」と信じることに相当の理由があった事実、これらのいずれかが認められれば、慰謝料請求は棄却されます。

「相手の婚姻関係が破綻していると信じていた」という状況は、法律上の防御として十分機能しうるものです。請求を受けた段階で諦めず、まずは弁護士に相談することをお勧めします。

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「夫婦関係は終わっていると聞いていた」「離婚届を見せてもらっていた」など、状況によっては慰謝料請求を争える可能性があります。弁護士法人市ヶ谷板橋法律事務所では、不貞慰謝料に関するご相談を無料でお受けしています。

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監修
弁護士 板橋晃平
弁護士法人市ヶ谷板橋法律事務所代表弁護士。離婚・男女問題を中心に、企業法務・一般民事を幅広く取り扱う。
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