2026年7月前後には、企業実務や日常生活に関係する複数の法改正・制度改正が相次いで施行されます。中でも企業にとって最も重要なのは、同年7月1日に障害者の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引き上げられる点です。これにより、これまで障害者雇用義務の対象外だった一部の中小企業も、新たに対象となる可能性があります。本記事では、障害者雇用率の引上げを中心に、パスポート手数料の改定、国際観光旅客税の引上げ、新規化学物質に関する電子申請義務化、環境省の地方組織改編まで、この時期に対応が必要となる主な改正を横断的に解説します。
※本記事は、2026年6月11日時点で公表されている情報をもとに作成しています。実際の対応にあたっては、必ず最新の公的情報をご確認ください。
1 2026年7月施行の主な法改正・制度改正
2026年7月に施行される主な改正は次のとおりです。
| 施行日 |
改正・制度変更 |
主な内容 |
| 2026年7月1日 |
障害者雇用率の引上げ |
民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%へ引上げ |
| 2026年7月1日 |
旅券法関係の改正 |
パスポート手数料の改定、18歳以上の5年旅券の廃止等 |
| 2026年7月1日 |
国際観光旅客税の引上げ |
出国1回あたり原則1,000円から3,000円へ引上げ |
| 2026年7月1日 |
労働安全衛生規則関係の改正 |
新規化学物質の届出・申請について電子申請が原則義務化 |
| 2026年順次移行 |
化審法関係の手続見直し |
申出者コード廃止・GビズIDへの移行等 |
| 2026年7月1日 |
環境省設置法関係の改正 |
地方環境事務所を「地方環境局」に改組 |
以下、それぞれの内容を見ていきます。
2 障害者雇用率が2.7%へ引上げ
対象事業主の目安(改正前)
40.0人以上
常用労働者数
対象事業主の目安(改正後)
37.5人以上
常用労働者数
⑴ 民間企業の法定雇用率が2.5%から2.7%へ
2026年7月1日から、民間企業に適用される障害者の法定雇用率は2.5%から2.7%へ引き上げられます。これにより、常用労働者数に応じて、障害のある方をより多く雇用する必要が生じる可能性があります。
障害者雇用率制度は、一定規模以上の事業主に対し、常用労働者数に応じた割合で障害のある方を雇用することを求める制度です。法定雇用率を満たしているかどうかは、「障害のある方を何人雇っているか」だけでは判断できません。常用労働者数の数え方、短時間労働者の取扱い、障害の程度による換算など、複数の要素をあわせて計算する必要があります。法改正のタイミングでは、まず自社の常用労働者数と現在の障害者雇用数を正確に把握することが出発点となります。
⑵ 対象となる事業主の範囲も拡大
法定雇用率の引上げにあわせて、障害者雇用義務の対象となる民間企業の範囲も拡大します。
改正前(〜2026年6月)
常用労働者数
40.0人以上
の事業主が対象
改正後(2026年7月〜)
常用労働者数
37.5人以上
の事業主が対象
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常用労働者数が37.5人以上40.0人未満の企業が、2026年7月から新たに障害者雇用義務の対象となります
中小企業では、自社が対象かどうかを十分に確認していないケースも少なくありません。今回の改正では、特に従業員数が40人前後の企業において、早めの確認が必要です。
⑶ 自社の対応は十分ですか?――企業が確認すべき6つのポイント
今回の障害者雇用率引上げにあたり、企業が確認すべき主なポイントは次の6点です。
1 常用労働者数の確認 ▶
パート・アルバイトを含め、障害者雇用率制度上どのようにカウントされるかを確認します。短時間労働者は一定の換算方法が適用されるため、単純な在籍人数と異なる場合があります。
2 現在の障害者雇用数の確認 ▶
障害者手帳の有無、障害の種別、労働時間などにより雇用率算定上の取扱いが異なります。採用時の書類や現場の状況を改めて確認することが必要です。
3 採用計画・職場環境整備の見直し ▶
単に人数を満たすだけでなく、配属先の業務内容、合理的配慮の内容、相談体制まで整えることが重要です。
4 障害者雇用状況報告への対応 ▶
対象事業主は、毎年6月1日現在の障害者雇用状況をハローワークに報告する必要があります。なお、2026年6月1日時点の報告では改正前の法定雇用率2.5%を前提に確認されるため、2026年7月以降に新たに対象となる企業は、次回以降の報告も見据えて準備を進める必要があります。
5 障害者雇用納付金制度との関係 ▶
法定雇用率を未達成の場合、常用労働者数が100人を超える事業主は障害者雇用納付金の対象となります。自社の状況を確認してください。
6 ハローワーク・専門家への相談 ▶
対応に不安がある場合は、ハローワーク、社会保険労務士、弁護士等への相談も検討してください。制度の確認から採用計画まで支援を受けられます。
⑷ 実務上は「人数合わせ」だけでは不十分
障害者雇用率の引上げに対応する際、法定雇用率を満たす人数を採用すれば足りる、という考え方は適切ではありません。採用後の定着支援、業務内容の調整、職場内の理解促進、相談窓口の整備といった取組みが欠かせません。職場環境が整っていないまま採用を進めると、早期離職や職場内トラブルにつながる可能性があります。
また、障害のある従業員に対しては、障害者雇用促進法上、過重な負担とならない範囲で合理的配慮を提供することが求められます。本人との対話を通じて、業務上必要かつ過重な負担とならない範囲で、職場環境や業務遂行上の配慮を検討することが重要です。今回の改正を機に、障害者雇用を単なる法令対応としてではなく、人事労務管理・コンプライアンス・職場環境整備の一環として見直すことが望まれます。
このセクションのポイント
2026年7月から法定雇用率は2.7%へ引き上げられ、対象事業主の範囲も常用労働者数37.5人以上へ拡大します。特に従業員数が40人前後の企業は早急な確認が必要です。
まず自社の常用労働者数と障害者雇用数を正確に把握し、2.7%での不足人数を試算することが対応の第一歩です。
採用人数の確保だけでなく、職場環境の整備・合理的配慮の提供・相談体制の構築が、障害のある従業員の安定した就労につながります。
3 パスポート手数料・旅券制度の見直し
2026年7月1日以降の申請分から、パスポート手数料が改定されます。また、同日以降、5年旅券は18歳未満の方に限られ、18歳以上の方は10年旅券を申請する扱いとなります。
なお、外務省は、手数料改定に伴い7月1日以降に申請が集中し、旅券交付まで通常より時間がかかる可能性があることも案内しています。7月以降に海外渡航を予定している場合は、手数料の変更だけでなく、交付までの期間にも注意が必要です。
このセクションのポイント
2026年7月以降の申請から手数料が改定され、18歳以上の5年旅券も廃止となります。渡航計画がある方は手数料改定前後の時期を確認してください。
申請集中による旅券交付の遅延が見込まれるため、海外渡航の予定がある方は早めの申請対応が必要です。
4 国際観光旅客税が3,000円へ引上げ
2026年7月1日以後の日本からの出国については、国際観光旅客税の税率が出国1回あたり原則1,000円から3,000円へ引き上げられます。
改正前(〜2026年6月) 1,000円
→
改正後(2026年7月〜) 3,000円
この税は通常、航空券代金等に含めて徴収されるため、旅行者が個別に納付を意識する場面は多くありません。しかし税率が3倍になることで、海外旅行や海外出張にかかる費用は実質的に増加します。企業においては、海外出張規程や費用精算の運用において費用増加を見込んでおく必要があります。
なお、2026年7月1日より前に締結された一定の運送契約に基づく出国については、旧税率が適用される場合があります。具体的な適用関係は、運送契約の締結時期や航空券等の内容により異なるため、国税庁・税関の案内を確認してください。
このセクションのポイント
2026年7月1日以後の出国から、国際観光旅客税が出国1回あたり1,000円から3,000円へ引き上げられます。
企業は海外出張規程や費用精算の運用において費用増加を見込んでおく必要があります。施行日前後の契約・発券時期による適用関係も確認してください。
5 新規化学物質関係の電子申請が原則義務化
2026年7月1日から、労働安全衛生法に基づく新規化学物質関係の一部手続について、電子申請が原則義務化されます。対象となる手続には、新規化学物質の名称・有害性調査結果の届出、労働者が新規化学物質にさらされるおそれがない旨の確認申請、少量新規化学物質の製造・輸入に係る確認申請などが含まれます。
改正前 📄 紙・郵送申請
→
改正後(2026年7月〜) 💻 電子申請(原則義務化)
この改正は、主に新規化学物質を製造・輸入する企業や、研究開発部門を通じて新規化学物質を取り扱う企業に関係します。対象事業者は、電子申請に必要なアカウントの確認、社内承認フローの整備、提出資料の管理体制の見直しが必要です。特に、従来、紙や郵送を前提に手続を行っていた企業では、実務フローの変更が求められます。
このセクションのポイント
化学物質を製造・輸入・取り扱う企業は、電子申請に必要なアカウント取得・社内承認フロー・資料管理体制を施行日前に整備してください。
従来、紙・郵送で手続を行っていた企業は実務フローの全面的な見直しが必要です。早めに関係部署と連携して対応を進めることが重要です。
6 化審法関係の手続見直し
化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)に関しても、新規化学物質の製造・輸入に関する手続の電子化が進められています。経済産業省は、少量新規化学物質の申出等について、電子申請における申出者コードの利用を順次廃止し、GビズIDの利用に変更する旨を案内しています。
改正前 申出者コード
→
改正後(順次移行) GビズID
化学物質管理に関する手続は、労働安全衛生法上の届出と化審法上の届出が並行して問題となることがあります。化学物質を取り扱う企業では、どの法令に基づく手続が必要か、どのシステムで申請するかを整理しておくことが重要です。
このセクションのポイント
化学物質を取り扱う企業は、労働安全衛生法・化審法それぞれの手続を整理し、GビズIDへの移行対応を進めてください。どの法令に基づく申請が必要かを部署横断で確認することが重要です。
7 地方環境事務所が「地方環境局」へ
2026年7月1日から、環境省の地方支分部局である「地方環境事務所」の名称が「地方環境局」に改められます。一般の事業活動に直ちに大きな影響を与えるものではありませんが、環境規制、廃棄物処理、自然公園、野生生物保護、地域脱炭素、災害廃棄物対応などに関係する事業者にとっては、行政窓口の名称変更として把握しておく必要があります。
改正前 地方環境事務所
→
改正後(2026年7月〜) 地方環境局
行政機関宛ての届出書類や社内マニュアル、契約書・仕様書に「地方環境事務所」という表記がある場合は、今後の運用に合わせて確認することが考えられます。
このセクションのポイント
「地方環境事務所」が「地方環境局」に改称されます。環境関係の届出書類・社内マニュアル・契約書内に旧名称の記載がある場合は、今後の運用に合わせて表記を確認・更新してください。
8 企業が優先して対応すべきこと
2026年7月施行の改正のうち、多くの企業にとって最も重要なのは障害者雇用率の引上げです。まず次の手順で対応を進めることをおすすめします。
1 自社が障害者雇用義務の対象となるか確認する ▶
常用労働者数が37.5人以上の企業が対象です。これまで対象外だった企業ほど確認が遅れやすいため、早めに自社の規模を把握してください。
2 常用労働者数と現在の障害者雇用数を正確に把握する ▶
パート・アルバイトの換算方法、在籍者の算定区分を確認します。単純な在籍人数ではなく、制度上のカウント方法で把握することが重要です。
3 法定雇用率2.7%で不足が生じるか試算する ▶
不足人数を把握したうえで、採用計画の立案に移ります。余裕をもって試算し、複数のシナリオで検討することが望ましいです。
4 採用計画・配置部署・業務内容を検討する ▶
受け入れ部署の業務内容を整えてから採用活動を進めることが定着につながります。「どこで・何をしてもらうか」を先に設計することが重要です。
5 合理的配慮・職場定着支援の体制を整備する ▶
本人との対話を通じ、業務上の配慮内容を具体化します。相談窓口の設置、周囲の従業員への説明も含めて体制を整えてください。
6 障害者雇用状況報告・納付金制度との関係を確認する ▶
毎年6月1日現在の報告義務と、常用労働者数100人超の場合の納付金制度との関係を確認しておきます。
7 ハローワーク・社会保険労務士・弁護士等に相談する ▶
制度の詳細確認や採用計画の策定は、専門家と連携して進めることが確実です。不安がある場合は早めに相談することをおすすめします。
特に常用労働者数が37.5人以上40.0人未満の企業は、今回初めて障害者雇用義務の対象となる可能性があります。これまで対象外であった企業ほど制度の確認が遅れやすいため、施行日前に余裕をもって対応を進めてください。
このセクションのポイント
常用労働者数37.5人以上40.0人未満の企業は今回初めて対象となるため、施行日前の早急な対応確認が特に重要です。
採用人数の確保と、職場環境整備・合理的配慮の整備を同時進行で進めてください。人数合わせだけでは安定した雇用につながりません。
ハローワーク・社会保険労務士・弁護士等の専門家に早めに相談することが、確実な対応につながります。
まとめ
2026年7月には、障害者雇用率の引上げ、パスポート手数料の改定、国際観光旅客税の引上げ、新規化学物質関係の電子申請義務化、環境省の地方組織改編など、複数の制度改正が施行されます。
企業実務への影響が特に大きいのは、障害者雇用率の引上げです。民間企業の法定雇用率は2.7%となり、対象事業主の範囲も常用労働者数37.5人以上へ拡大します。単に人数を満たすだけでなく、障害のある従業員が安定して働ける職場環境を整えることが、今回の改正対応の本質です。
施行日直前になってからでは準備が難しい場合があります。対象となる可能性がある企業は、早めに自社への影響を確認し、採用計画・職場環境・合理的配慮の体制を見直しておくことをおすすめします。
よくある質問
法定雇用率2.7%になると、自社は何人の障害者を雇用する必要がありますか?
A
法定雇用率に常用労働者数(短時間労働者は換算)を乗じて算出します。
たとえば常用労働者数が100人(換算後)の場合、2.7人となりますが、法定雇用障害者数の算定では1人未満の端数を切り捨てるため、少なくとも2人の雇用が必要です。ただし、障害の種別や労働時間によって換算率が異なるため、正確な数値はハローワークや専門家に確認することをおすすめします。
常用労働者数が37.5人以上40.0人未満ですが、どのような義務が生じますか?
A
2026年7月以降、障害者雇用義務の対象となり、障害のある方を1人以上雇用することが求められます。
また、毎年6月1日現在の雇用状況をハローワークに報告する義務(障害者雇用状況報告)も発生します。ただし、2026年6月1日時点の報告は改正前基準で行われるため、2026年7月から新たに対象となる企業は、次回以降の報告も見据えて準備を進める必要があります。
法定雇用率を達成できない場合、どのような対応が求められますか?
A
常用労働者数が100人を超える事業主が達成できない場合、不足1人あたり月5万円の障害者雇用納付金が徴収されます。
著しく達成状況が低い場合には、ハローワークから雇入れ計画の作成命令が出ることもあります。常用労働者数が100人以下の企業は障害者雇用納付金の対象外ですが、常用労働者数が37.5人以上である場合には、法定雇用率に基づく障害者雇用義務自体は課されます。そのため、納付金の対象外であっても、早期に雇用状況を確認し、必要な対応を進めることが重要です。
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