解決事例・コラム

2026/05/27 解決事例・コラム

令和8年施行の家族法改正で何が変わる?離婚後共同親権・養育費・親子交流の全解説

令和8年施行の家族法改正で何が変わる?
離婚後共同親権・養育費・親子交流の全解説

最終更新日:令和8年5月27日 離婚

2026年(令和8年)4月1日、令和6年成立の改正家族法が施行されました。今回の改正は、離婚後共同親権の導入をはじめ、養育費の法定化、親子交流に関する新たなルール整備など、離婚に関わる家族法の根幹を大きく変えるものです。これまで「離婚すれば一方が親権を持つ」という単独親権が原則でしたが、今後は父母双方が親権を持ち続ける選択肢が生まれます。本コラムでは、改正の三本柱である「共同親権」「養育費」「親子交流」について、実務上の重要ポイントを弁護士がわかりやすく解説します。

1 離婚後の親権――共同か単独か、どう決まる?

選択的共同親権制度とは

改正前は、離婚すると必ず父母のどちらか一方が親権者になる「単独親権制度」が採用されていました。改正後は、父母が協議または裁判所の判断により、双方を親権者とする(共同親権)か、一方を親権者とする(単独親権)かを選択できる制度(以下「選択的共同親権制度」)に変わりました(民法819条1項・2項・5項)。この制度が導入された主な背景は次の3点です。

離婚後も父母双方が子の養育に関わりその責任を果たすことが、子の利益にとって望ましい

発達心理学の観点から、父母双方の関与が子どもの発達に良い影響をもたらすという指摘がある

離婚後共同親権の導入は国際的な潮流とも合致する

協議離婚の場合の親権者の決め方

父母が協議上の離婚をする場合には、その協議により、父母の双方又は一方を親権者と定めます(民法819条1項)。この際には、子の利益を最も優先して親権者を定めることはもちろん、子の意見を適切に尊重することで、子の人格をも尊重することが求められます。

もっとも、子の意見を尊重することは、必ずしも子の希望どおりにしなければならないという意味ではありません。父母が子の意見と異なる判断をする場合には、子の年齢や理解力に応じて、その判断の理由をできる限り分かりやすく伝えることが、子の人格を尊重する趣旨を実現するために求められます。

協議が調わない場合は、以下の順序で手続が進みます。

1

家事審判または家事調停の申立て

父母どちらか一方または双方が、家庭裁判所に親権者指定の申立てを行います。

弁護士裁判所
2

審判の確定または調停の成立

裁判所が共同親権・単独親権のいずれかを決定します。

裁判所
3

協議離婚の届出

審判・調停の結果を踏まえ、離婚届を提出します。

弁護士

裁判所が親権を判断する基準

裁判所が共同親権か単独親権かを判断する枠組みは、民法819条7項によって定められています。まず「必要的単独親権事由」に該当するかが検討され、該当する場合は必ず単独親権となります。該当しない場合でも直ちに共同親権となるわけではなく、裁判所が諸事情を総合考慮して決定します。

必要的単独親権事由とは

この事由は「父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるとき」という包括的な基準であり、以下の2号がその典型例として明文化されています。

民法819条7項1号

子の心身に害悪を及ぼすおそれがあるとき

子に対する虐待のおそれがある場合が典型例。親権喪失・停止事由に準じる事情がある場合も含まれます。

⚖ この場合は単独親権と定められます
民法819条7項2号

父母が共同して親権を行うことが困難なとき

DVや精神的・経済的・性的虐待のおそれがある場合が典型例。虚言や重大な約束違反の繰り返しにより最低限の協議すら期待できない場合も含まれます。

⚖ この場合も単独親権と定められます

総合考慮とは

必要的単独親権事由に該当しない場合、裁判所は以下の3点を子の利益を最優先に考慮しながら総合的に判断し、共同親権か単独親権かを裁量的に決定します。共同親権と単独親権の間に原則・例外の関係はありません。また、「協力関係」とは親権の共同行使に最低限必要な意思疎通ができる関係があれば認められるもので、頻繁な連絡や友好的な関係まで求められるものではないと整理されています。

父母と子の関係

各親と子どもとの関係性・絆・日常の関わりの深さ

父と母の関係

最低限の意思疎通ができる関係があれば足りる。友好的な関係や頻繁な連絡までは不要

その他一切の事情

子の年齢・生活環境・意見など、子の利益を最優先に総合判断

⚖ 共同親権または単独親権(裁判所の裁量)

親権者の変更

改正により、変更のパターンは①一方の単独親権→他方の単独親権、②共同親権→単独親権、③単独親権→共同親権の3種類になりました。また、今までは父母のみだった申立権者に、新たに子自身も加わりました(民法819条6項)。DV等を背景とした不適切な合意で親権者が定められた場合には、その経緯も変更の要否を判断する際に考慮されます。

このセクションのポイント

1 離婚後の親権は「共同」と「単独」どちらも選択できるようになった
2 DVや虐待のおそれがある場合など子の利益を害する事情があれば「必要的単独親権」として単独親権になる
3 共同親権に必要な「協力関係」は最低限の意思疎通があれば足りる
4 子自身も親権者変更の申立権者になった

2 婚姻中を含めた親権行使のルール

共同行使の原則と例外

父母双方が親権者である場合、原則として親権は共同で行使します(民法824条の2第1項本文)。これは、子に関する重要事項は父母が熟慮のうえで慎重に協議して決めることが子の利益に望ましいという考え方によるものです。ただし、以下の場合はその例外として単独行使が認められます。

📅

日常の行為

監護・教育に関する日常の行為は単独で行使できます。同居親が別居親から不当に干渉されることなく日常の監護を行えることを明確にした規定です。

⚖️

親権行使者の指定

重要事項で父母の意見が対立する場合、家庭裁判所が「特定の事項に係る親権行使者」を指定する審判を出すことができます(民法824条の2第3項)。居所決定・高校在学契約・重大な医療行為などが例として挙げられています。

🏥

他の一方が親権を行使できないとき

行方不明・重病など、法律上または事実上親権を行使できない場合は単独行使が認められます。

🚨

子の利益のため急迫の事情があるとき

入学手続、緊急の医療行為、虐待等からの避難など、裁判所の手続を経ていては適時に対応できない場合は単独行使が認められます。

このセクションのポイント

1 共同親権では原則として重要事項は父母が協議して決める
2 日常の行為や緊急時は同居親が単独で判断できる
3 意見が対立した場合は家庭裁判所が親権行使者を指定する審判を出すことができる

3 離婚後の子の監護――監護者・監護の分掌とは?

監護者の定め

共同親権で離婚する父母の間でどちらが子の監護を担うか争われている場合、父母のいずれかを、子と同居して日常的な世話をする「監護者」として定めることが求められます。監護者は身上監護に関する事項について親権者と同一の権利義務を持ち、単独で身上監護に関する行為を行うことができます(民法824条の3第1項)。なお、財産管理や法定代理権の行使については父母双方の権利義務に変更はなく、監護者の権限は身上監護に限られます。

また、監護者以外の親権者は、監護者による身上監護を妨げてはならないとされています(同条2項)。監護者は父母間の協議によって定められるもので、協議が調わないときは、家庭裁判所が定めます。

監護の分掌

改正民法766条1項は「子の監護の分掌」(子の身上監護を父母が分担すること)を明文化しました。これにより、離婚後の子の監護について多様な選択が可能になります。主な2つの類型は以下の通りです。

📅 期間の分掌 例:平日は母/休日は父

一定期間ごとに父母が交替して子の監護を担う方法。ある期間の分掌者は日常行為は単独で行えますが、期間後も影響が継続する重大な行為は、急迫の事情がある場合を除いて他方の共同親権者と共同で行う必要があります。

📚 事項の分掌 例:教育は父/医療は母

「教育に関する事項」「医療に関する事項」など抽象的なテーマについて、身上監護の権限を父母の一方に委ねる方法。担当する親は重大な行為も単独で行うことができ、他方親はこれを妨げてはなりません。

このセクションのポイント

1 共同親権でも「誰が実際に子と住んで世話をするか」を監護者として定められる
2 平日・休日で交替するなど柔軟な監護のあり方が選択できる
3 教育・医療などテーマごとに担当する親を決めることも可能

4 親子交流の新しいルール

「面会交流」から「親子交流」へ

改正法では、従来「面会交流」と呼ばれていたものについて、「親子交流」という表現が用いられるようになりました。「面会」という言葉は限られた時間に直接対面する場面を想起させやすく、ビデオ通話やメールなど多様な交流方法が普及している現状に照らすと必ずしも実態に即していないとの指摘がありました。今回の変更はこのような考え方を反映したものです。

婚姻中別居時の親子交流

改正前は、婚姻中の別居時における親子交流に明文規定がなく、裁判実務では改正前民法766条の類推適用によって対応していましたが、ルールが明確でないとの指摘が以前よりなされていました。これを受けて、民法817条の13が新設され、父母の協議または家庭裁判所の判断によって婚姻中別居時の親子交流について必要な事項を定めることができるようになりました。

親子交流の試行的実施

適切な親子交流の在り方を検討するため、調停・審判の手続中に親子交流を試行的に実施し、その結果を調整や判断の資料とする制度が改正家事事件手続法152条の3として明文化されました。家庭裁判所がこの制度の利用を当事者に促すためには、次の2要件をいずれも満たす必要があります。

子の心身の状態に照らして相当でないと認める事情がないこと
事実の調査のため必要があると認めること

なお、促されても必ず実施する義務はなく、実施結果または実施しなかった理由の報告が求められるにとどまります。

父母以外の親族との交流

従来、祖父母など父母以外の第三者については、たとえ事実上子を監護してきた者であっても、面会交流についての審判申立てはできないとされてきました。改正民法766条の2では、「子の利益のため特に必要があると認めるとき」は、父母以外の親族と子との交流を定めることができるようになりました。申立権は原則として父または母にありますが、一方が死亡・行方不明であるなど「他に適当な方法がない」といえるときに限り、子の直系尊属・兄弟姉妹・過去にその子を監護していた者も申立てができます。

このセクションのポイント

1 婚姻中の別居時にも「親子交流」のルールが法律に明文化された
2 調停・審判の手続中に試行的な親子交流を実施できる制度が新設された
3 一定の条件のもとで祖父母など父母以外の親族と子の交流も認められるようになった

5 養育費の改正ポイント

法定養育費の創設

改正の重要な柱の一つが「法定養育費」の創設です(民法766条の3第1項)。改正前は、養育費の取決めをしないまま離婚した場合、後から請求するには協議や調停・審判が必要でした。改正後は、取決めなしで離婚した場合でも、子の監護を主として行う親は離婚時から養育費を請求できるようになりました。

ただし、法定養育費は協議等による取決めがされるまでの暫定的・補充的な措置として位置づけられており、適正な額を求めるためには引き続き協議や手続による取決めが必要です。対象となるのは2026年(令和8年)4月1日以後に離婚した場合に限られます(附則3条2項)。

金額 月額2万円 × 子の数 法務省令による。適正額は別途取決めが必要
支払時期 毎月末 始期:離婚の日(当月は日割計算)
終期(最も早い日) ①取決め日 ②審判確定日 ③子が18歳に達した日 始期を含む月も日割計算
義務者の拒絶事由 ①支払能力を欠く場合
②著しく生活が窮迫する場合
調停・審判で減額・免除・猶予を求めることも可能
対象となる離婚・権利者 2026年(令和8年)4月1日以後の離婚 権利者:離婚の時から引き続き子の監護を主として行う父または母。施行日前に離婚した方は従来どおり協議・調停・審判による取決めが必要です。

養育費債権への先取特権付与

改正前は養育費を強制回収するには債務名義(判決等)が必要であり、一般債権として必ずしも十分な配当が受けられるとは限りませんでした。改正後は、法定養育費を含む養育費債権に一般先取特権が付与されたため、債務名義なしで民事執行の申立てが可能になりました。先取特権の対象となる額は月額8万円×子の数と定められています。

民事執行手続のワンストップ化

①財産開示手続、②債務者の給与債権に係る情報取得手続、③給与債権の差押手続の3つを、地方裁判所への1回の申立てで連続して行えるようになりました。これにより養育費請求のための手続負担が大幅に軽減されています。

情報開示命令の新設

養育費等に関する審判事件において、家庭裁判所が申立てまたは職権で当事者に収入・資産状況に関する情報の開示を命じることができる制度が新設されました。正当な理由なく開示しない場合や虚偽の情報を開示した場合には10万円以下の過料が科されます。

このセクションのポイント

1 取決めなしで離婚しても、離婚日から自動的に月2万円×子の数の養育費が発生する(2026年4月1日以後の離婚に限る)
2 養育費債権に先取特権が付与され、債務名義なしで差押えが可能になった
3 財産開示・情報取得・差押えを1回の申立てで完結できる

6 よくある質問(FAQ)

離婚するとき、必ず共同親権にしなければならないのですか?

Aいいえ。必ず共同親権になるわけではありません。

改正法では「選択的」共同親権制度が採用されており、父母の協議や裁判所の判断で単独親権を選ぶことも可能です。ただし、DVや虐待のおそれがある場合など共同親権を定めることが子の利益を害すると認められる事情がある場合には、必ず単独親権となります。

共同親権になった場合、子どもの学校や病院を決めるときは、必ず父母二人の合意が必要ですか?

A必ずしも、すべてについて父母二人の合意が必要になるわけではありません。

転校や、子の心身に重大な影響を与える医療行為などの重要事項については、原則として父母の共同決定が必要です。ただし、入学金の振込みや緊急の医療行為など、家庭裁判所の手続を経ていては適時に対応できない事情がある場合には、例外的に単独で行うことができます。

法定養育費の月2万円は、2026年4月1日以前の離婚にも適用されますか?

A適用されません。

法定養育費は2026年(令和8年)4月1日以後の離婚にのみ適用されます。施行日前に離婚した方は、従来どおり協議や調停・審判による取決めが必要です。

離婚前の別居中に、子どもと会うことはできますか?

A別居中であっても、子の利益にかなう場合には、親子交流を行うことができます。

改正により、婚姻中別居時の親子交流についても、協議によって定めることができるようになりました。協議が調わない場合は、家庭裁判所に申立てをすることができます。

祖父母が、父母が離婚した孫と面会交流を行いたい場合、どうすればよいですか?

Aまずは、父母を通じて親子交流について協議することが原則です。

原則として申立権は父母のみが有します。ただし、一方の死亡や行方不明など、父母による交流に関する協議や申立が期待できない事情があるときは、祖父母(直系尊属)本人が申立てをすることができます。

7 まとめ

令和6年に成立し、令和8年に施行された民法改正は、離婚後の子どもの養育に関するルールを大きく変える重要な改正です。

今回の改正では、主に次の点が変わります。

①父母の合意または裁判所の判断により、共同親権・単独親権を選択できること 
②DVや虐待のおそれがあるなど、子どもの利益を害する事情がある場合には、単独親権になること 
③令和8年4月1日以後に離婚した場合、取決めがなくても法定養育費が発生すること 
④養育費を回収するための手続が使いやすくなること 
⑤親子交流に関するルールが明文化・整理されること

これらはいずれも、離婚後の生活や子どもの養育に直接関わる重要な内容です。離婚や養育費、親権、親子交流について不安がある場合には、早めに弁護士へ相談することをおすすめします。

離婚・親権についてお困りの方へ

令和8年施行の家族法改正により、離婚後の親権・養育費・親子交流のルールは大きく変わりました。ご自身のケースに改正法がどう影響するか、まずは弁護士にご相談ください。

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監修者情報

監修者:弁護士 板橋晃平

所属:東京弁護士会

取扱分野:相続、企業法務、不動産、離婚・男女問題、労務問題、その他一般民事

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