解決事例・コラム

2026/07/16 解決事例・コラム

中小企業の株式承継|計画的な対策で円滑な事業承継を実現する方法

企業法務

中小企業の株式承継|計画的な対策で円滑な事業承継を実現する方法

公開日:2026年7月16日

中小企業経営者にとって、事業承継は会社の存続に直結する重要な課題です。とりわけ大きな論点となるのが「株式承継」です。株式は会社の支配権そのものであるため、分散すれば経営の安定性を損なうおそれがあります。一方で、後継者に株式を集中させようとすると、相続時に遺留分侵害の問題が生じたり、多額の納税資金が必要になったりすることもあります。本記事では、事業承継における株式承継の考え方と、実務上のポイントについて解説します。

1 オーナー企業が直面する株式承継の課題

オーナー企業では、株式の集中と分散のバランスをどのように取るかが事業承継の大きなテーマとなります。株式承継を進めるにあたっては、次のような課題に留意する必要があります。

経営の安定性への影響

株式が複数の株主に分散すると、後継者以外の株主の意向によって重要な経営判断が滞るおそれがあります。

遺留分侵害のリスク

後継者に株式を集中させると、他の相続人の遺留分を侵害し、相続時に遺留分侵害額請求などのトラブルに発展することがあります。

納税資金の確保

株式の評価額が高額になる場合、贈与税・相続税の負担が大きくなり、後継者側で納税資金をどのように確保するかが問題となります。

2 非上場株式はどのように評価されるのか

非上場企業の株式には市場価格がないため、相続税・贈与税を算定する際には、次のような方式によって評価額を算出します。会社の規模や株主の立場(同族株主か少数株主かなど)によって、用いられる方式は異なります。

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類似業種比準方式

事業内容が類似する上場企業の株価等を基準に評価額を算出する方式です。

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純資産価額方式

会社の資産・負債から算出した純資産額を基準に評価額を算出する方式です。

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配当還元方式

経営への関与が小さい少数株主などに用いられる、配当額を基準とした簡便的な方式です。

⚖️
折衷方式

類似業種比準方式と純資産価額方式を一定の割合で組み合わせて評価額を算出する方式です。

どの方式が適用されるかによって株式の評価額は大きく変わるため、承継を検討する早い段階で、税理士等の専門家に評価額を試算してもらうことが重要です。

3 事業承継税制の仕組みと活用のポイント

事業承継に伴う株式の贈与税・相続税の負担を軽減する手段として、事業承継税制(特例措置)が設けられています。一定の要件を満たして特例承継計画などの手続を行うことで、株式に係る贈与税・相続税の納税が猶予される仕組みです。

事業承継税制を検討する際の留意点
1 この制度はあくまで納税の「猶予」であり、「免除」ではありません。将来、要件を満たさなくなった場合には猶予が取り消され、利息を含めた納税が求められることがあります。
2 雇用の維持など複数の認定要件があり、認定手続や適用期限についても定めがあるため、事前の準備期間を確保しておく必要があります。
3 制度の適用可否や有利性は会社ごとの状況によって異なるため、適用を検討する場合は税理士と早い段階で相談することが望まれます。

※事業承継税制の適用期限・認定要件の詳細(特例承継計画の提出期限等を含む)は、最新の制度内容をご確認のうえ、税理士等の専門家にご相談ください。

4 株式承継の方法を明確にする

株式承継の方法は、誰に承継させるかによって大きく分類されます。承継先の方針が明確になっていないと、その後の評価額の試算やスキーム選択が進みません。

親族内承継

子や親族に株式を承継させる方法です。相続・贈与・売買など複数の手段を組み合わせて計画的に進めます。

親族外承継

役員や従業員など、親族以外の関係者に承継させる方法です(いわゆるMBO・EBOなど)。

第三者への承継

M&Aによって社外の第三者に株式を譲渡する方法です。後継者不在の場合の選択肢となります。

また、承継先の方針を決めた後も、種類株式(拒否権付株式など)を活用して経営権を後継者に集中させつつ、その他の株式を分散させる設計や、持株会社を設立して株式を集約する方法など、会社の状況に応じたスキームを検討することができます。承継のタイミングについても、後継者の育成状況や経営者自身の健康状態・判断能力を踏まえて計画的に見極める必要があります。

5 株式承継の基本的な流れ

1
後継者の有無・承継先の明確化
親族内・親族外・第三者のいずれに承継させるか、方針を決定します。
2
自社株の評価額の試算
名義株や議決権の状況も含めて確認し、評価額を試算します。
3
シミュレーションの実施
評価額や税負担を踏まえ、承継方法・スキームごとの結果をシミュレーションします。
4
株式の分散リスクの整理
種類株式の活用など、分散リスクを防ぐための設計を検討します。
5
贈与・売買・遺言の整備などの実行
決定した方針に沿って、必要な手続を計画的に実行します。

6 株式だけでは不十分?資産全体で考える事業承継

事業承継では、株式だけでなく、事業に関係する資産の承継にも注意が必要です。たとえば、事業用の土地や建物を経営者個人が保有している場合、後継者が株式をすべて承継したとしても、その他の資産を後継者以外の相続人が取得すれば、会社運営に支障が生じるおそれがあります。

COLUMN
資産全体を含めたグランドデザインが重要です

事業に不可欠な資産は、後継者に引き継ぐことを前提に整理しておく必要があります。不動産における相続税評価(貸家建付地評価・小規模宅地等の特例など)を活用することで評価額が圧縮され、税負担を軽減できる制度もあるため、税務面を踏まえて承継方法を検討することが大切です。現物出資や売却など、個人保有の不動産を会社・後継者に移転する手法も含め、資産構成全体を踏まえたシミュレーションが求められます。また、不要な不動産を早めに整理・換金しておくことで、他の相続人への分配原資とすることも可能です。

まとめ

1 株式の分散・集中にはそれぞれリスクがあるため、承継方針の早期決定が重要です。
2 非上場株式の評価方式を理解し、税理士と連携して評価額を把握することが承継計画の出発点になります。
3 事業承継税制は有効な手段ですが、猶予と免除の違いや取消リスクを正確に理解しておく必要があります。
4 株式だけでなく、事業用資産全体を含めた承継設計を検討することが円滑な事業承継につながります。

株式承継に関するご相談

株式承継は、評価方法や税制、承継スキームなど専門的な検討が必要となる分野です。会社の状況に応じた進め方について、弁護士法人市ヶ谷板橋法律事務所にお気軽にご相談ください。

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監修
弁護士 板橋晃平
企業法務・労務問題を中心に取り扱う。法改正への実務対応、就業規則の整備、労働トラブルの解決支援など幅広く対応している。
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