2026/07/16 解決事例・コラム
暗号資産(仮想通貨)の相続方法とは?ウォレットの調査から生前対策まで解説
暗号資産(仮想通貨)の相続方法とは?
ウォレットの調査から生前対策まで解説
公開日:2026年7月16日1 暗号資産(仮想通貨)とは何か
暗号資産とは、インターネット上でやり取りできる財産的価値を有するものであり、資金決済に関する法律第2条14項に定義されています。実務上、暗号資産は相続の対象になると解されています。なお、法令上は「仮想通貨」ではなく「暗号資産」という名称が用いられています。
代表的な暗号資産にはビットコインやイーサリアムがあり、一般に「販売所」や「取引所」と呼ばれる暗号資産交換業者(以下「国内取引所」といいます)を通じて入手・換金することができます。
暗号資産を相続する場合、暗号資産それ自体、または国内取引所に対する債権が相続の対象となります。
2 保管・管理場所をどう調査するか
ウォレットの管理者を確認する
暗号資産は「ウォレット(財布)」と呼ばれる仕組みで管理されていますが、保管場所を把握していないと処分が困難になるおそれがあります。相続財産の調査では、次の2点を確認することになります。
国内取引所が管理するウォレットに預けているのか、被相続人自身が管理するウォレットで保管しているのかを確認します。
被相続人自身が管理している場合、どのようなタイプのウォレットで保管しているのかを確認する必要があります。
国内取引所で購入した暗号資産をそのまま取引所のウォレットに預けているケースが大部分であり、この場合は国内取引所に暗号資産の有無・種類・数量を問い合わせれば足ります。どこの取引所に預けているか不明な場合は、被相続人の確定申告書、銀行の取引履歴、スマートフォンやパソコン内のアプリ・ブラウザの閲覧履歴、メール、郵便物などから取引所とのやり取りがないかを調査します。
問題となるのは、国内取引所のウォレットを使わず、被相続人自身が別途ウォレットを作成して暗号資産を保管している場合です。ウォレットの仕組みは複雑であるため、相続人が管理情報や保管場所を把握していないと調査が困難になります。
ウォレットの種類ごとの調査方法
インターネットに接続せず物理的に保管する方式です。ハードウェアウォレット(USB状のデバイスなど)やペーパーウォレット(アクセス情報を紙に記録したもの)が代表例で、この物自体がどこにあるかを調査する必要があります。紛失すれば暗号資産も失われます。
インターネットに接続する形で保管する方式です。オンラインウォレットやモバイルウォレット(専用アプリ)が代表例で、スマートフォンやパソコンのアプリ・ソフトのインストール状況、ブラウザの閲覧履歴などから保管場所を調査します。
いずれのタイプでも、ウォレット内にアクセスするには暗証番号(PINコード)や復元フレーズ(シードフレーズ)などの重要情報が必要です。相続人がこれらの情報を知らない場合、保管場所を突き止めても暗号資産を処分できない事態になります。
3 暗号資産はどのように相続されるのか
暗号資産は、実務上、預貯金と同様に遺産分割協議の対象となると解されています。遺言書があれば遺言に基づき相続手続を行い、遺言書がない場合は遺産分割協議を経て相続人を確定させる必要があります。
国内取引所における暗号資産の相続手続きは、銀行における預貯金の相続手続きとほぼ同様の流れで進みます。具体的な手続きの内容は、各国内取引所のホームページやカスタマーセンターへの確認が必要です。
4 生前対策のポイント(ケーススタディ)
夫が暗号資産を保有し、大手国内取引所のウォレットに預ける一方、自身が管理するハードウェアウォレットでも保管しているケースを想定します。推定相続人である妻と子は暗号資産の知識がなく、保管場所も把握していません。このような場合、生前にどのような対策を講じておくべきかを検討します。
A案:生前に保管場所やアクセス情報を共有する
暗号資産が処分困難となる事態を回避できます。
推定相続人が生前から資産にアクセスできる状態になります。
国内取引所でウォレットを保管している場合は、少なくとも利用している取引所名を生前から共有しておくとよいでしょう。被相続人自身がウォレットを管理している場合は、①ウォレットの種類、②保管場所、③PINコードやシードフレーズ、ログインIDなどアクセスに必要な情報を共有しておく必要があります。生前に全ての資産情報を共有することに抵抗がある場合は、後述のエンディングノートや遺言書に詳細を記載しておく方法も考えられます。
B案:遺言書を準備する
特定の相続人・受遺者に暗号資産を承継させることができます。
遺言書だけでは不十分で、ウォレットへのアクセス情報も別途残す必要があります。
遺贈の場合の文例としては、次のような記載が考えられます(「相続させる」旨の遺言の場合も同様の構成になります)。
記
【国内取引所に預けている場合】
⑴暗号資産の種類(例:ビットコイン、イーサリアム)
⑵暗号資産の数量(例:10BTC、100ETH)
⑶暗号資産交換業者名(例:〇〇株式会社)
⑷利用者ID(例:12345)
【ハードウェアウォレットに保管している場合】
⑴暗号資産の種類・⑵数量(同上)
⑶ハードウェアウォレットの特定(例:〇社の「(製品名)」)
暗号資産を特定させることとは別に、ウォレットにアクセスするための重要情報(PINコード、シードフレーズ、ログインIDなど)も相続人に残しておく必要がある点に注意してください。
C案:エンディングノートを準備する
暗号資産が処分困難となる事態を回避できます。
法的効力はありません。
生前からエンディングノートを準備し、暗号資産の保管場所やウォレットへのアクセス情報を詳細に記載しておくことで、相続財産が処分困難となる事態を回避できます。ただしエンディングノートには法的効力がないため、遺言書と併せて準備することをおすすめします。
5 まとめ
暗号資産の相続は、ウォレットの種類や保管場所によって難易度が大きく変わり、被相続人自身が管理するウォレットであるほど調査・処分が困難になる傾向があります。生前のうちから保管場所やアクセス情報の共有、遺言書、エンディングノートといった対策を組み合わせておくことで、相続人が処分困難な状態に陥ることを避けられます。
暗号資産の相続に関するご相談
暗号資産の相続は、ウォレットの種類や保管状況によって対応方法が異なり、専門的な調査や手続きが必要になることがあります。生前対策・相続発生後の対応いずれについても、お気軽にご相談ください。

