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2026/05/28 企業法務

景品表示法の課徴金制度とは?広告を出す企業が知っておくべきリスクと対策

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景品表示法の課徴金制度とは?
広告を出す企業が知っておくべきリスクと対策

公開日:2026年5月28日 

景品表示法には課徴金制度が設けられており、不当表示をしていた期間の売上の3%の支払いを命じられる可能性があります。「うちは大丈夫」と思っていた企業が、ある日突然消費者庁の調査を受け、多額の課徴金を課されるケースも珍しくありません。本記事では、課徴金制度の仕組み・計算方法・免除要件、そして企業が今すぐ取り組むべき予防策を、弁護士がわかりやすく解説します。

1 課徴金制度が設けられた経緯

景品表示法(不当景品類及び不当表示防止法)は、消費者を不当な表示から守るための法律です。従来は違反行為に対して「措置命令」(違反行為の差止め命令)のみが行政処分として規定されており、経済的なペナルティがありませんでした。

しかし、措置命令だけでは不当表示をした事業者が得た不当な利得を回収できず、抑止力として不十分だという指摘が続いていました。そこで2016年(平成28年)4月から、不当表示によって得た利益を吐き出させる仕組みとして課徴金制度が施行されました。

抑止力の強化

措置命令だけでは「違反して得た利益」が手元に残るため、再違反のインセンティブが残っていました。課徴金により経済的に割に合わない仕組みが整備されました。

消費者被害の深刻化

食品の産地偽装や健康食品の効能誇張など、消費者の選択を歪める不当表示の被害が後を絶たず、より強力な規制が求められていました。

国際的な規制水準との整合

欧米の主要国では広告規制に金銭的制裁が設けられており、日本でも同様の制度が求められていました。課徴金制度はその国際標準への対応でもあります。

📖 解説
景品表示法
不当な景品類の提供や不当な表示を禁止し、一般消費者の利益を保護する法律。正式名称は「不当景品類及び不当表示防止法」。
措置命令
消費者庁や都道府県の担当機関が違反行為をした事業者に対して行為の差止め等を命じる行政処分。課徴金とは別に発令されうる。
課徴金
違反行為期間中の売上額に一定率を乗じて算定され、国庫に納付を命じられる金銭的ペナルティ。
抑止力
違反行為を行おうとする事業者の動機を経済的・法的に抑え込む手法または効果。課徴金はその代表的な手段。

2 課徴金対象行為とは何か

課徴金の対象となるのは、景品表示法第5条第1号(優良誤認表示)または第2号(有利誤認表示)に該当する不当表示をする行為です。これらを総称して「優良・有利誤認表示」と呼びます。第5条第3号に基づく指定告示違反は課徴金の対象外です。

自社の広告は該当していませんか?

第5条第1号 優良誤認表示

品質・規格・内容について実際のものより著しく優良と示す表示。または競合他社より著しく優良と事実に反して示す表示。

具体例
▸ 「国産素材100%使用」(実際は外国産) ▸ 根拠なし「特許取得済み成分配合」
第5条第2号 有利誤認表示

価格その他の取引条件について実際のものより著しく有利と誤認させる表示。または競合他社より著しく有利と事実に反して誤認させる表示。

具体例
▸ 架空の通常価格で「50%OFF」 ▸ 適用外多数なのに「全品半額」
これらの表示が「一般消費者に著しく優良・有利と誤認させ、自主的かつ合理的な商品選択を阻害するおそれがある」と判断されると課徴金対象行為に該当します

「表示」の範囲は非常に広い

課徴金の対象となる「表示」は、容器・包装だけでなく、チラシ・パンフレット・ポスター・看板・テレビCM・インターネット広告・SNS投稿、そして口頭による説明まで広く含まれます。どのような媒体で行われた広告であっても、一般消費者を誘引するための手段であれば「表示」に該当します。

また、優良・有利誤認に該当するかどうかは、特定の文言や図表だけでなく表示内容全体から一般消費者が受ける印象・認識を基準に判断されます。事業者の故意・過失の有無は問われません。

📖 解説
優良誤認表示
商品・サービスの品質や内容が実際より著しく優れているかのように見せる不当表示。景表法第5条第1号に規定。
有利誤認表示
価格や取引条件が実際より著しく有利であるかのように誤認させる不当表示。景表法第5条第2号に規定。
著しく
社会一般に許容される程度の誇張を超え、一般消費者の商品選択に影響を与えるほどの誇張があること。
公正競争規約
景品表示法第36条の規定により、公正取引委員会及び消費者庁長官の認定を受けて、事業者又は事業者団体が表示又は景品類に関する事項について自主的に設定する業界のルール。

3 課徴金額の計算方法

課徴金額は、「課徴金対象期間」に取引した対象商品・サービスの売上額に3%(過去に課徴金命令を受けたことがある場合は4.5%)を乗じた額です。ただし、算定額が150万円未満(売上額5,000万円未満が目安)の場合は命令が出ません。

課徴金対象期間の考え方

課徴金対象期間
表示開始日
表示停止日
最後の取引日
不当表示停止後
速やかに取引も停止
不当表示停止後も
取引を継続した場合
最長 6か月
最長 3年
課徴金対象期間
延長期間(最大6か月)
延長上限:①停止から6か月経過日 ②誤認解消措置をとった日 のいずれか早い日

売上額の算定

課徴金対象期間の
売上額
×
3%
標準算定率
(通常の場合)
4.5%
割増算定率
(過去10年以内に課徴金命令ある場合)
=
国庫へ納付する
課徴金額
算定額が150万円未満(売上額5,000万円未満が目安)の場合は課徴金命令が出ません

売上額は税込みの対価の合計であり、事業者の直接の取引先(卸売業者・小売業者)への販売額も含まれます。製造事業者が卸売業者経由で販売している場合も、製造事業者から卸売業者への販売額が課徴金算定の基礎となります。

なお、売上額から控除できる項目として、量目不足等による値引き額、返品額、書面上明らかな割戻し金の額が認められています。

このセクションのポイント

1 課徴金 = 課徴金対象期間の売上額 × 3%(繰り返し違反は4.5%)
2 算定額が150万円未満(売上額5,000万円未満が目安)の場合は免除
3 不当表示をやめた後も最長6か月間の取引分が課徴金対象期間に含まれうる
📖 解説
課徴金対象期間
課徴金の計算基礎となる売上額を集計する期間。原則は不当表示をした期間に、表示停止後の取引継続期間が加算される場合がある。最大3年。
誤認解消措置
事業者が不当表示であることを日刊新聞等で一般消費者に周知することで、消費者への誤解や影響を取り除く措置。
割増算定率
過去10年以内に課徴金命令を受けたことがある事業者が再違反した場合に適用される4.5%の算定率。
引渡基準
課徴金対象期間に引き渡された・提供された、不当表示に関する商品・サービスの対価を合計する算定方法。

4 課徴金が免除される条件

不当表示をした事業者であっても、一定の要件を満たす場合には課徴金の納付を命じられません。ただし、この免除は非常に限定的な条件のもとにのみ認められます。

「相当の注意を怠っていない」という免除要件

不当表示に該当することを「知らず、かつ、知らなかったことにつき相当の注意を怠っていない」と認められる場合に限り、課徴金の納付命令が出ません。この判断は「課徴金対象行為をした期間を通じて」のものであり、違反期間の途中で問題を認識しながら放置した場合には免除されません。
なお、課徴金の免除を主張する事業者は、「相当の注意を怠っていない」といえる具体的な事情を、根拠資料の確認状況、社内審査体制、問題発覚後の対応状況などに基づいて説明できるようにしておく必要があります。

🔬
検査機関の試験結果を確認した

表示をする際に信頼できる検査機関に依頼し、その試験結果報告を確認したうえで表示を行い、後に誤りが判明した際は速やかに表示をやめた場合。

📄
仕入れ先の証明書を確認した

仕入れ先から交付された産地証明書等を確認したうえで表示を行い、後に証明書の虚偽記載が判明した際は速やかに表示をやめた場合。

パッケージ表示を確認した

仕入れた商品のパッケージに記載された原材料表示を確認し、それに基づいて販売表示を行い、問題が判明後は速やかに表示をやめた場合。

🤝
取引先から書面で合意を得た

旅行や宿泊サービス等で、役務の内容について取引先事業者との間で書面による合意と証明書を取得したうえで表示を行い、後に違反が判明した際は速やかにやめた場合。

免除が認められないケース

従業員の報告や第三者からの指摘を受けたにもかかわらず何ら調査・確認を行わなかった場合や、問題を把握しながらも表示を継続した場合は、「相当の注意を怠っていない」とは認められず課徴金の納付を命じられます。

また、「業界の慣行としてこのような表示をしていた」という事実は免除の根拠にはなりません。正常な商慣習は「一般消費者の利益の保護の見地から是認されるもの」に限られます。

このセクションのポイント

1 免除されるには「知らなかった」かつ「注意義務を尽くしていた」の両方が必要
2 問題を把握した後に速やかに表示をやめることが免除の要件の一つ
3 業界慣行・故意・過失の有無は免除判断とは無関係

5 企業が取るべき具体的な予防策

課徴金リスクを回避するために、広告を出す企業が今すぐ取り組むべき予防策を解説します。消費者庁は「事業者が講ずべき景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」(平成26年内閣府告示第276号)を公表しており、これに沿った体制を整備することが「相当の注意を怠っていない」と認められる根拠にもなります。

1 表示の根拠となる情報を事前に確認・保存する
広告・パッケージ・ウェブサイト等に記載する品質・効能・価格等の情報について、信頼できる検査機関の試験結果、仕入れ先の証明書、自社の検品記録等の根拠資料を取得・保存してください。根拠なく表示した後に問題が発覚した場合は免除が認められにくくなります。
2 社内で表示内容を審査する体制を構築する
新しい広告・販促物を制作する際に法務部門や外部弁護士が景品表示法の観点からチェックする体制を設けてください。特に「最上級表現(業界No.1・最高品質等)」「比較広告」「打消し表示(小さな文字での但し書き)」は要注意です。
3 従業員への教育・研修を定期的に実施する
営業・マーケティング担当者だけでなく、店頭スタッフや制作担当者も含め、優良誤認表示・有利誤認表示の具体例を使った研修を定期的に行ってください。問題のある表示を発見した際の内部報告ルートを明確にしておくことも重要です。
4 問題発覚後は速やかに表示をやめて対応する
内部報告や第三者からの指摘により不当表示の可能性が判明したら、速やかに当該表示を停止・修正してください。放置することで「知っていたのに継続した」とみなされ、免除要件を満たさなくなります。また、誤認解消措置(新聞等での周知)をとれば課徴金対象期間の終期を早めることができます。
5 景品表示法の最新動向を継続的にチェックする
課徴金制度はこれからも法改正がありえます。消費者庁の公表する課徴金納付命令事例や業種別の注意ポイントを定期的に確認し、自社の広告・表示基準を随時アップデートしてください。

NG表示とOK表示の比較

価格
表示
× 避けたい

架空の「通常価格」を設定して「50%OFF」と表示。通常価格は実際に販売したことのない価格。

○ 望ましい

実際に販売していた価格を使用し、「過去○か月の販売価格」等と根拠を明示する。

素材
表示
× 避けたい

「松阪牛使用」と謳うが実際には一部のみで大半は他の牛肉を使用している。

○ 望ましい

産地・品種・使用割合を正確に表示し、仕入れ先から産地証明書を取得・保管する。

📚 参考資料・関連リンク
消費者庁 不当景品類及び不当表示防止法第8条(課徴金納付命令の基本的要件)に関する考え方(令和6年4月18日改定)
課徴金制度の運用方針を示す消費者庁の公式文書。算定方法・免除要件・想定例を詳しく解説しています。
消費者庁 景品表示法関係ガイドライン等
社内体制整備のガイドライン。免除要件「相当の注意を怠っていない」と認められるための実践的な参考資料です。
※リンク先の資料は公開時点の情報です。最新の改定情報は消費者庁公式サイトをご確認ください。

まとめ

1 景品表示法の課徴金は不当表示をした期間の売上の3%(繰り返し違反は4.5%)の納付を命じられる重大なリスク
2 優良誤認(品質・効能の誇張)と有利誤認(価格・取引条件の誇張)が主な対象。媒体・手段を問わずあらゆる表示が対象
3 「相当の注意を怠っていない」場合は免除されうるが、要件は厳格。問題を認識したら速やかに表示をやめることが必須
4 予防策は①表示根拠の確認・保存 ②社内審査体制の構築 ③従業員教育 ④迅速な問題対応 ⑤最新動向のウォッチの5点

よくある質問(FAQ)

課徴金の対象になるのはどんな広告ですか?
A 景品表示法第5条第1号・第2号に該当する不当表示が対象です。

商品・サービスの品質・効果を実際より著しく優良に見せる表示(優良誤認表示)や、価格・取引条件を実際より著しく有利に誤認させる表示(有利誤認表示)が該当します。特定の文言だけでなく、表示内容全体から一般消費者が受ける印象で判断されます。

課徴金の金額はどのように計算されますか?
A 課徴金対象期間中の売上額に3%(繰り返し違反は4.5%)を乗じた額です。

不当表示をしていた期間(最大3年)に取引した対象商品・サービスの売上額が基礎となります。売上額は消費税込みで、直接の取引先(卸・小売含む)への売上が対象です。算定額が150万円未満(売上額5,000万円未満が目安)の場合は課徴金命令が出ません。

「相当の注意を怠っていない」と認められれば課徴金は免除されますか?
A はい。ただし「違反期間を通じて」の判断であり、途中で気づいて放置した場合は免除されません。

不当表示に該当することを知らず、かつ知らなかったことにつき相当の注意を怠っていないと認められる場合には課徴金の納付命令が出ません。ただしこの判断は違反期間全体を通じてのものです。途中で問題を認識しながら放置した場合は免除されません。

社内で表示内容を確認していれば課徴金を免れますか?
A 信頼できる根拠に基づき確認し、問題判明後に速やかに対応すれば免除が認められ得ます。

信頼できる検査機関の試験結果や仕入れ先の証明書を確認したうえで表示を行い、問題が判明した後に速やかに表示をやめた場合には「相当の注意を怠っていない」と認められ得ます。形式的な確認にとどまり実態把握が不十分な場合は認められないことがあります。「景品類の提供及び表示の管理上の措置についての指針」に沿った社内体制整備が重要です。

広告表示のリスクについてご相談ください

景品表示法への対応や社内審査体制の整備は、問題が起きる前に専門家に相談することが最善策です。当事務所では企業の広告・表示リスクのチェックから、消費者庁調査対応まで幅広くサポートしております。

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監修者情報

板橋晃平 弁護士

企業法務・広告規制・景品表示法対応を中心に幅広く取り扱う。消費者庁の調査対応や社内コンプライアンス体制の構築支援にも注力。

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© 弁護士法人市ヶ谷板橋法律事務所