2026/02/18 解決事例・コラム
相続をめぐる最新の課題: 押さえるべきポイントと対策
相続をめぐる最新の課題:
押さえるべきポイントと対策
最終更新日:2026年2月17日
相続を取り巻く最新の課題と対策
相続に関する手続きや制度は、ここ数年で大きく動いています。相続登記の義務化をはじめ、所有者不明土地や増加する空き家、相続税制の改正、高齢者の認知症対策としての成年後見制度、生前贈与や共有不動産の問題など、相続を取り巻く課題は多岐にわたります。
相続は、発生してから慌てて対応するよりも、事前に「何が起きうるか」を理解したうえで準備しておくことで、手続の負担や親族間のトラブルを大きく抑えられる分野です。特に、不動産が含まれる場合や、相続人が複数にわたる場合、あるいは将来の認知症リスクが懸念される場合には、手続が連鎖的に難しくなる傾向があります。
本記事では「誰に・何を・いつ・どこで・なぜ・どのように」準備すべきかという視点から、制度動向と実務上の対策を整理します。大切な財産を次世代へ円滑に引き継ぐために、まずは現状を確認し、必要な場面では専門家のサポートも活用しながら、無理のない計画を立てていきましょう。
相続登記の義務化とは
これまで、不動産を相続しても登記名義を変更しないまま放置されるケースが多く見られました。たとえば、相続した実家を当面使う予定がない、兄弟姉妹で話し合いがまとまらない、手続が面倒で先送りしてしまう、といった事情で、登記が未了のまま年月が経過することがあります。
しかし、こうした未登記不動産が増えた結果、所有者が分からない土地が社会問題化しました。そこで、2024年(令和6年)4月1日から、不動産を相続した方には相続登記の申請義務が課されることになりました(政府広報オンライン)。
相続によって不動産を取得した相続人は、原則としてその取得を知った日から3年以内に登記申請を行う義務があります。さらに重要なのは、施行日前に発生した相続で未登記の不動産も義務化の対象であり、原則として2027年3月31日までに相続登記が必要(経過措置)と整理されている点です(政府広報オンライン)。
正当な理由なく期限内に申請しない場合、10万円以下の過料が定められています(法務省)。
相続登記の義務化に関するまとめ
- 2024年(令和6年)4月1日から、不動産を相続した方に申請義務
- 施行日前の相続で未登記のものも対象で、原則として2027年3月31日までに登記が必要(経過措置)
- 正当理由なく申請しない場合、10万円以下の過料
なお、遺産分割協議がすぐにまとまらない場合でも、期限管理の観点からは、暫定的な対応策(例:相続人申告登記など)を検討できることがあります。具体的な使い分けは法務省の案内に沿って判断するのが安全です。
所有者不明土地と空き家問題
相続登記が放置された不動産が増えると、その所有者を特定できない「所有者不明土地」が生じます。政府広報オンラインでは、登記簿だけでは所有者の所在が判明しない土地が全国の約23%に及び、面積は九州を上回る旨と報告されています。このような所有者不明土地の増加は、公共事業の用地取得や災害復興の妨げになるなど、深刻な問題となっています(政府広報オンライン)。
こうした事態を防ぐためにも、相続登記の義務化は重要な対策とみなされています。名義変更が進めば、少なくとも「誰が権利者か」を把握しやすくなり、行政や民間の利活用の場面でも手続が前に進みやすくなるからです。
また、相続に伴う問題として空き家の増加も見逃せません。総務省統計局の「令和5年住宅・土地統計調査(速報集計)」では、2023年時点で全国の空き家数が約900万戸、住宅全体の13.8%が空き家と示されています(総務省統計局)。
相続で実家を取得したものの住む予定がなく、そのまま放置されるケースは典型例です。放置空き家は老朽化が進み、倒壊の危険や衛生面の問題が生じ、近隣にも影響を与えかねません。自治体は一定の場合に、空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)に基づき、助言・指導、勧告、命令等の枠組みで措置を行い得ます((e-Gov 法令検索)。
リスクを避けるためには、相続した不動産を適切に管理し、有効活用するか売却するか、現実的な判断が求められます。もし管理や処分が難しい土地であれば、一定の要件の下で国に引き渡す制度(相続土地国庫帰属制度)を検討する余地もあります。ただし国庫帰属には要件があり、引き取れない場合もあります。制度の適用可否を見誤らないことが重要です。
相続税制と生前贈与:早めの資産承継で負担を調整できる場合も
相続が発生すると、相続財産の額によっては相続税の申告・納税が必要になります。現行制度では、遺産総額から基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を差し引いた残りに対して課税されます。たとえば相続人が配偶者と子ども二人の場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円となり、遺産総額がそれを超える部分が課税対象となります。
相続税の課税対象を求める計算式
課税対象額=遺産総額-基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)
相続税の負担調整の手段として、生前贈与が検討される場面があります。暦年課税では、贈与税の非課税枠(年110万円)があるため、計画的な活用が検討されることがあります。
ただし、制度改正により安易な理解は危険です。国税庁の整理では、暦年贈与の相続税への加算(いわゆる持ち戻し)の対象期間が段階的に拡大し、最終的に相続開始前7年以内の贈与が対象となります。もっとも、拡大された相続開始前3年超~7年以内の部分については、合計100万円までは相続財産に加算しない扱いが設けられています(国税庁)。
一方、相続時精算課税制度については、改正により年間110万円の基礎控除(この範囲の贈与は贈与税申告不要等)が設けられています。実務上は、暦年課税と相続時精算課税のどちらが適切か、贈与の目的や家族構成、財産の性質を踏まえた設計が重要です(国税庁)。
また、生前贈与は「税だけ」の話ではありません。特別受益の評価や家族間の公平感、将来の紛争火種になり得る点も含め、税務と法務をセットで検討する必要があります。弊所では、税理士等と連携しながら相続税対策のご相談にも対応しておりますので、早めに全体設計を進めましょう。
認知症への備えと任意後見制度:判断能力が低下する前に
日本では高齢化が進み、認知症を患う方の数も増加しています。内閣府の資料等では、2025年には65歳以上の認知症高齢者が約700万人、65歳以上の5人に1人という見込みが示されています(内閣府)。
認知症などで判断能力が不十分になると、ご本人名義の預貯金の管理や不動産の売却などが困難になり、いわゆる「資産凍結」の状態に陥るおそれがあります。また、遺言を作成できなくなり、「本来こうしたかった」という意思を相続に反映できないまま手続が進むリスクもあります。
このような事態に備えて注目されているのが、成年後見制度の中の任意後見制度です。任意後見制度では、本人に判断能力があるうちに、信頼できる人(親族や専門職等)を将来の任意後見人に指名し、委任する内容を公正証書で契約しておくことができます(厚生労働省)。
任意後見契約は、契約しただけでは直ちに効力が生じません。将来、判断能力が低下した段階で家庭裁判所が任意後見監督人を選任し、その時点で契約が発効する仕組みです(制度案内に基づく一般的整理)。
利用状況については、内閣府の資料で「登記件数(契約の登記)」として、2019年時点で累計登記件数は約12万件規模と報告されています(内閣府)。
認知症の兆候が出てからではなく、元気なうちに任意後見契約、財産管理委任、遺言書作成等を検討しておくことが、財産保全と意思の尊重につながります。弊所では、任意後見契約の締結支援や実務の進め方についてもご相談を承っております。
共有不動産の問題:早めの解消と合意形成がカギ
相続によって不動産を共有するケースは多く見受けられます。共有状態では、利用や処分に関する意思決定のルールが複雑になり、方針が一致しないと不動産の価値を十分に生かせないまま時間が過ぎてしまうことがあります。
特に重要なのは、行為の性質により同意要件が異なる点です。民法上、共有物の「変更」と「管理」ではルールが分かれており、たとえば売却や大規模な改築・建替えなど「変更」に当たる行為は原則として共有者全員の同意が必要となります。一方、賃貸などは内容により“管理”として持分の過半数で足りる場合もあり、具体的判断が重要です。。
さらに問題なのは、共有状態のまま次世代へ相続が重なることです。共有者の一人が亡くなると、その持分は相続により細分化され、持分権者が多数化し、合意形成が困難になります。行方不明者や判断能力が低下した方が含まれると、事実上、処分も活用もできない「塩漬け」の土地になりかねません。
対策としては、相続発生時になるべく共有を解消することが望ましいといえます。遺産分割協議で不動産を単独所有とする代わりに他の相続人へ代償金を支払う方法、不動産を売却して代金を分配する方法などが代表例です。すでに共有状態になっている不動産でも、持分の買取りや合意形成により整理を進めることが、将来のトラブル予防になります。
話し合いで解決できない場合には、共有物分割請求など裁判手続を検討することもあります。共有不動産を巡る紛争は長期化しやすい分野ですので、早めに専門家へ相談し、適切な方針を立てることが重要です。
まとめ
相続登記の義務化(経過措置期限を含む)や所有者不明土地・空き家問題、税制改正、認知症リスクなど、相続を取り巻く環境は大きく変わっています。円満かつ確実な相続を実現するには、早い段階からの準備と専門家のサポートが欠かせません。
弊所は相続案件を数多く手がけてきた経験を活かし、お客様一人ひとりの事情に合わせた解決策をご提案いたします。初回相談は無料ですので、「何から始めればいいか分からない」「登記や手続きが不安」「家族に認知症の兆候があり心配」など、どんな小さな疑問でもお気軽にご相談ください。相続の悩みを安心に変える第一歩として、ぜひ弊所の無料相談をご活用ください。
本記事のポイント
- 施行日前の相続分でも未登記なら対象で、原則として2027年3月31日までに相続登記が必要(経過措置)
- 登記や管理を放置すると、権利関係が複雑化し、費用負担やトラブルが増えやすい
- 認知症による資産凍結を避けるには、判断能力があるうちに任意後見等を含めて備えることが重要
- 共有不動産は、行為が「管理」か「変更」かで同意要件が異なるため、相続段階での整理が将来の紛争予防になる
専門家がサポートできること
- 相続登記の段取り整理(期限・暫定策の整理を含む)
- 不動産を含む遺産分割の設計(共有解消、代償分割等)
- 生前対策の設計(税務と法務の一体設計)
- 紛争化した場合の調停・訴訟対応
参考資料一覧
- 相続登記の申請義務化について(法務省)
- なくそう所有者不明土地~相続登記等の申請が義務化されます(政府広報オンライン)
- 令和5年住宅・土地統計調査 住宅数概数集計(速報集計)結果(PDF)(総務省統計局)
- 空家等対策の推進に関する特別措置法(e-Gov法令検索)
- 相続開始前に贈与を受けた財産(暦年課税の加算等)(国税庁)
- 相続税・贈与税に関するパンフレット等(国税庁)
- 任意後見制度とは(手続の流れ、費用)(厚生労働省)
- 平成28年版高齢社会白書(全体版)(内閣府)
- 任意後見の登記件数の整理を含む資料(PDF)(内閣府)
- 民法(共有に関する規定を含む)(e-Gov法令検索)
- 相続土地国庫帰属制度(法務省)
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