解決事例・コラム

2025/08/26 解決事例・コラム

共有の解消方法から対策まで――共有不動産の解決方法と、相続で共有させない生前対策

共有の解消方法から対策まで――共有不動産の解決方法と、相続で共有させない生前対策

はじめに:なぜ共有は揉めやすいのか

不動産を複数人で持つ「共有」は、相続や離婚、親族間の整理で自然に生まれます。しかし、使い方・修繕・売却など重要な判断ほど合意形成が難しく、時間の経過とともに利害と感情が絡み合います。結果として「誰も使っていないのに動かせない」「固定資産税だけが出ていく」「売りたい人と住み続けたい人が対立する」といったストレスの源になりがちです。本稿では、共有不動産の現実的な解消手段と、そもそも相続で共有を生まないための生前対策を解説します。

 

共有不動産の基本ルール(使用・管理・処分)

  • 使用:各共有者は目的に反しない範囲で使用可能。
  • 管理(軽微な修繕・賃貸など日常的判断):原則、持分の過半数で決定。
  • 変更・処分(売却・大規模改築・用途変更):原則、全員の同意が必要。

この枠組みが、強行突破を防ぐ一方で合意形成のハードルを上げています。

共有状態を解消するには

① 単独名義化(買取・贈与・代償)

最も満足度が高いのは単独名義化です。特に相続共有では、ある相続人が他の共有者の持分を買い取り、名義を一本化します。価格は近隣相場・市場性・現況(居住・賃貸・空き家)等から協議します。

  • メリット:生活継続が容易、意思決定が迅速。
  • デメリット:買取資金の確保が課題。
  • 実務のコツ:査定書等の根拠を揃え、代金支払と持分移転登記を同時履行にする合意書で安全に。

② 共同売却(全員合意)

全員が「売る」ことに賛成できれば、共同売却が最短です。

  • メリット:市場価格で現金化しやすい。
  • デメリット:全員合意が必要で、売り時・価格で対立しやすい。
  • 実務のコツ:媒介契約前に分配割合・費用負担・残置物・明渡時期を合意書で固定。

③ 持分のみ売却(第三者へ)

協議が行き詰まると、自分の持分のみ第三者へ譲渡する選択肢があります。ただし買い手は共有リスクを織り込むため値引きされがちで、後の関係が複雑化する恐れも。

  • 向くケース:急ぎ資金が必要、他方が全く協議に応じない。
  • 注意点:将来的な紛争激化リスクを理解したうえで。

④ 現物分割・分筆

土地が広く、物理的に分けても価値が損なわれにくい場合は、測量・境界確定を経て分筆→各単独名義とするのが理想的です。

  • メリット:各自が自由に利用・処分可能。
  • デメリット:形状・接道・インフラ等で分けにくいケース、測量費・工事費の負担。

⑤ 共有物分割訴訟(裁判)

最終手段として裁判所が現物分割/代償分割/換価分割(競売等)のいずれかで決着をつけます。

  • メリット:合意不能でも出口を開ける。
  • デメリット:時間・費用負担、競売は市場価格より下がりやすい
  • 実務のコツ:評価資料の収集、長期化を見据え固定資産税や維持費の暫定負担も設計。

実務の進め方:もめない段取り

  1. 現況の棚卸し:登記簿、固定資産税評価、ローン・担保、占有・賃貸の有無、修繕履歴、境界・越境。
  2. 選択肢の試算:単独名義化(資金・税コスト)/共同売却(価格・費用・時期)/分筆(可否・費用)/裁判(期間・競売リスク)。
  3. 合意書の骨子:価格、支払時期・方法、同時履行、違約条項、引渡時期、原状回復、残置物、固定資産税・修繕費の精算。
  4. 安全な決済:司法書士・金融機関同席、登記申請と代金支払の同時化、公正証書化の検討。

税務の要点(概略):持分売却は譲渡所得課税、贈与は贈与税、取得側は不動産取得税・登録免許税等。案件により扱いが変わるため、税理士と早期連携を。

ケース別の考え方

  • 居住中の家:居住利益が価格に影響。単独化するなら一定期間の居住継続代償金の分割払い等の設計が有効。
  • 賃貸中の物件:賃借人対応・敷金・原状回復・更新・不払いリスクを洗い出し、価格に反映。
  • 空き家:劣化が早く価値低下と維持費が同時進行。早期方針が重要。
  • 農地・私道・借地権付建物:規制・同意・承諾料等の外部要素が大きい。拙速な価格決定は避ける。
  • 境界未確定:まず測量・境界確定。曖昧なままの売却は後の紛争の種。

相続で共有にしないための生前対策

遺言で「遺産分割方法の指定」

特定不動産を単独相続させ、他の相続人には代償金や別財産で調整。代償金の原資(現金・保険・預金)を同時設計し、予備的記載も用意。

家族信託(民事信託)

受託者が管理し、帰属先・時期を柔軟に設定可能。認知機能低下リスクや収益不動産の長期管理に適合。

法人化(不動産管理会社)

不動産ではなく会社の持分を承継。定款と持分比率で意思決定をコントロールでき、膠着を回避しやすい。

生命保険・現金原資の確保

代償分割の実効性は原資の確保が鍵。生命保険や預貯金の計画的整備が遺留分の軟着陸にも有効。

生前贈与の活用

後に特別受益の持戻し対象となり得るため、公正証書化・時系列の記録・評価根拠の保存で予防。

よくある失敗と回避策

  • 相場無視の価格主張:第三者評価で基準を固定。
  • 登記・税務の置き去り:決済日に登記・納税スキームを同時化
  • 安易な持分売却:短期資金は得られるが紛争が長期化しがち。最後の手段に。
  • 期限管理の甘さ:合意書に期限と違約条項を明記。
  • 「とりあえず共有」固定:生前設計と相続直後の初動が勝負。

相談のベストタイミング

  • 合意形成が2〜3か月動かない
  • 価格・評価の根拠が揃わない
  • 連絡不能・音信不通の共有者がいる
  • 代償金の資金計画や税務影響が読めない
  • 生前設計(遺言・信託・法人化)を家族構成や事業承継と一体で考えたい

この段階で弊所へご相談いただくと、法的選択肢の見取り図を早期に描き、税理士・司法書士・不動産専門家と連携した実行計画に落とし込めます。

まとめ

共有不動産の解決は、感情の調整手続の正確さの両輪が鍵です。短期の譲歩が長期の安心と資産価値最大化をもたらす場面も少なくありません。現在共有でお困りの方は現況の棚卸しと選択肢の試算から、これから相続を迎える方は遺言・信託・原資確保の三点セットで「そもそも共有にしない」設計を検討しましょう。

 

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