2025/09/02 解決事例・コラム
不貞慰謝料請求——請求を受けた側が直ちに押さえるべき実務対応
不貞慰謝料請求——請求を受けた側が直ちに押さえるべき実務対応
最終更新日: 2025年9月2日はじめに
不貞(不倫)を理由とする慰謝料請求は、しばしば「金額交渉」の問題だと受け止められがちです。しかし、現実のリスクはそれだけではありません。請求の受け止め方や初動対応を誤ると、情報の流出、職場・家族・友人関係への波及、インターネット上での拡散といった二次被害に発展し、金銭以上に回復困難なダメージを招くことがあります。本稿では、「慰謝料請求を受けた側」が直ちに押さえるべき基本知識と実務対応を、弁護士の視点で整理します。
不貞慰謝料請求が「お金」以上に重い理由
1) 情報流出は一度起きると止めづらい
感情的な対立が強い場面では、相手方が「職場や家族に知らせる」「SNSに書く」などの圧力をかけてくることがあります。実際に拡散されると、名誉や信用の回復は困難で、法的対応にも時間と費用がかかります。示談での秘密保持条項と第三者連絡の禁止は、金額と同等かそれ以上に重要です。
2) 交渉過程そのものが“証拠化”する
メール・LINE・録音など、交渉の過程は後に裁判資料となり得ます。軽率な謝罪や断片的な事実認めは、法的評価を誤らせる原因に。窓口の一本化と文言の統一が不可欠です。
3) 二次被害の広がり方が読めない
当事者以外(親族、勤務先、取引先、学校等)に波及すると、社内規程や取引慣行上の不利益(配置転換・契約見直し等)が生じることも。拡散防止の取り決めと違反時の救済手当を設計しましょう。
初動で押さえるべき5ステップ
- 無視しない・独断で動かない — まずは受領確認と「弁護士経由で回答する」旨を簡潔に伝える。
- 連絡窓口の一本化 — 相手方・代理人との連絡は弁護士を通す。
- 証拠の保存 — LINE・メール・通話履歴などは削除せず保全。
- 事実関係メモの作成 — 交際開始や破綻状況を時系列で整理。
- 情報遮断と漏えい対策 — 家族や友人への共有は最小限に。
法的に争い得る主要ポイント
- 婚姻関係の破綻(破綻抗弁)
- 婚姻の認識がなかった(善意無過失)
- 肉体関係の不存在
- 期間・態様・影響の軽重
- 精神的損害との因果関係
相手方のNG行為と対応オプション
高額請求や「SNSに投稿する」といった脅しは違法性を帯びることがあります。秘密保持や接触禁止の合意を設けることを検討します。
示談交渉で必ず検討すべき条項
- 債権債務の特定
- 支払方法
- 秘密保持
- 接触・第三者連絡の禁止
- 清算条項・将来請求放棄
- 表明保証
- 違反時の手当
金額の考え方と支払い設計
個別事情で金額は大きく変動します。分割払いや期限猶予を交渉することも可能ですが、拡散や違約条項に注意が必要です。
絶対に避けたい失敗
- 証拠の削除
- 感情的な反論やSNS投稿
- 口頭のみの約束
- 知人を使った圧力
- 独断での直接接触
相談のタイミングと弁護士に依頼するメリット
初動の設計、交渉の可視化、将来請求の遮断、有事対応など、弁護士に依頼することで得られる利益は金額交渉を超えた部分にあります。拡散防止や秘密保持といった「非金銭的利益」を守ることこそ重要です。
まとめ
慰謝料請求への対応は、単なる金額交渉ではありません。情報の流出・社会的信用の低下をどう封じるかが実務の核心です。無視せず、証拠を保全し、窓口を一本化して、秘密保持と第三者連絡禁止を中核に据えた合意設計を目指してください。早い段階で弁護士の助言を得ることが、将来の生活を守る最短ルートです。
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