解決事例・コラム

2024/12/06 解決事例・コラム

「空き家放置で最大6倍の税負担!? 改正空き家法が警告する新たなリスク」

 202312月に日本で空き家に関する法律が改正され、相続した実家を放置すると固定資産税が最大で6倍になる可能性が出てきました。この改正は、空き家の放置問題に対する意識を高めるためのものです。ここでは、空き家問題の背景と改正内容について詳しく解説します。

  1. 空き家の増加とその影響

 日本国内で空き家が増え続けています。2023年の時点で、全国の空き家数は900万戸に達し、過去最多を記録しました。30年前の1993年には448万戸だったことから、空き家は30年でほぼ倍増した計算です。特に、相続による空き家が全体の55%を占めるため、相続件数の増加が空き家増加の主要な要因となっています。また、空き家のうち約4割が放置されている状態で、これは社会や経済にも影響を及ぼす問題です。

  1. 改正空き家法と「管理不全空き家」の新設

 空き家問題に対処するため、政府は2015年に特別措置法を施行し、2023年にはさらに厳しい改正を行いました。改正のポイントは、新たに「管理不全空き家」というカテゴリーを導入したことです。このカテゴリーは、従来の「特定空き家」よりも基準が緩く、屋根や塀の破損、敷地内のゴミなどの軽微な管理不足でも認定対象となります。これにより、自治体が迅速に空き家対策を取れるようになりました。

  1. 固定資産税の増加とリスク

 空き家を放置して「管理不全空き家」と認定されると、固定資産税の減税措置が解除される可能性があります。たとえば、通常の住宅地には固定資産税が6分の1に減額される優遇措置がありますが、この優遇が取り消されると税金が最大で6倍に跳ね上がる可能性があります。これは、遠方にある実家など、適切に管理されていない空き家を持つ人にとって、大きな経済的負担になるリスクがあります。

  1. 空き家放置がもたらす他のリスク

 空き家を放置すると、税金の増加だけでなく、自然災害や近隣への被害により損害賠償のリスクが発生することがあります。たとえば、放置された空き家の庭木が倒れて隣家の壁や車を壊した場合、数百万円の賠償責任が生じる可能性があります。特に、雪の多い地域では、積雪による空き家の屋根の破損が隣家に影響を与えることもあり、こうしたケースでの賠償額は数百万円に上ることもあります。放置することで予期せぬ出費が発生するリスクがあるのです。

  1. 空き家管理の重要性と早期対応

 空き家がある場合、早期に適切な対応を取ることが非常に重要です。空き家は放置すると急速に劣化し、資産価値が大幅に下がることがあります。特に、雨漏りなどの被害があると、短期間で建物全体が腐食し、解体費用が数百万円に達するケースもあります。こうしたリスクを避けるためには、空き家になる前から賃貸や売却の選択肢を検討し、できるだけ空き家の期間を短縮することが重要です。

  1. 改正空き家法がもたらす影響

 今回の法改正は、空き家問題に対する厳格な対応を求めるもので、特に「管理不全空き家」に対する対応が強化されました。従来の法律では、空き家を撤去する際、所有者に「助言」「勧告」「命令」と段階的な手続きを踏む必要がありましたが、改正後は緊急性が高い場合、命令を省略して解体することが可能になりました。また、その際の費用は全て所有者の負担となるため、空き家の所有者は経済的リスクに備える必要があります。

  1. 空き家の維持管理と活用の選択肢

 空き家を放置せずに活用する方法として、賃貸や売却の他にも、リノベーションや定期的なメンテナンスを行う選択肢があります。空き家の管理にはコストがかかりますが、放置するよりもリスクが少なく、資産価値を維持するための手段となります。また、空き家になった直後であれば、適切なメンテナンスを行うことで中古住宅として活用できる可能性もあります。早期対応が資産価値を守る鍵となります。

8.まとめ

 空き家を放置することで生じる税金の増加やリスクは非常に高く、改正空き家法により厳格な対応が求められています。相続や高齢化に伴い、増加する空き家問題は早期に適切な対策を取ることでリスクを軽減できます。特に「管理不全空き家」の新設により、軽微な修繕不足でも問題視されるようになったため、所有者は定期的な点検やメンテナンスを怠らないことが重要です。適切な空き家対策を取ることで、不要な税負担や賠償責任を回避し、資産価値を守ることができるでしょう。

※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。

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