2026/04/05 解決事例・コラム
相続人の範囲と順位|養子・欠格・代襲相続をわかりやすく解説
相続人の範囲と順位|養子・欠格・代襲相続をわかりやすく解説
「誰が相続人になるのか」は、遺産分割や相続税の計算において最初に確認すべき重要な問題です。民法は相続人となれる者の範囲と順位を明確に定めており、配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹それぞれの立場によって扱いが異なります。このコラムでは、相続人の範囲と順位・養子の取り扱い・相続欠格と廃除・胎児や同時死亡のルール・代襲相続の仕組みまで、一般の方にわかりやすくお伝えします。
1 相続人の範囲と順位
相続人となることができるのは、被相続人の①子(またはその代襲者)、②直系尊属(父母・祖父母など)、③兄弟姉妹(またはその代襲者)、④配偶者(法律上の婚姻関係にある者。内縁関係は含まない)です。
複数の相続人がいる場合は一定の順位により相続人となり、同順位の者が複数いるときはその全員が共同で相続します。配偶者は常に相続人となり、他の相続人と組み合わせて相続します(民法887条・889条・890条)。なお、相続を放棄した者・相続欠格に該当する者・廃除された者は相続人から除かれます。
| 順位 | 相続人の組み合わせ | 主なポイント |
|---|---|---|
| 第1順位 | 子と配偶者 | 実子・養子・嫡出子・非嫡出子を問わない。連れ子を相続人にするには養子縁組が必要 |
| 第2順位 | 直系尊属と配偶者 | 子・孫がいない場合に相続人となる。親等の近い者が優先。実父母と養父母は同順位 |
| 第3順位 | 兄弟姉妹と配偶者 | 直系卑属も直系尊属もいない場合。兄弟姉妹の子(甥・姪)への代襲はあるが再代襲はなし |
⑴ 養子
養子とは、養子縁組の届出により養親の嫡出子としての身分を取得した者です(民法809条)。養親に相続が開始すると、養子は第1順位の相続人となります。養子には普通養子と特別養子の2種類があります。
| 区分 | 普通養子 | 特別養子 |
|---|---|---|
| 養親の制限 | 満20歳以上の者 | 満25歳以上の夫婦(一方が25歳未満の場合はその者が20歳以上)で共に養親 |
| 養子の制限 | 養親より年少者 | 原則として15歳未満 |
| 縁組の手続 | 養子が未成年でなければ当事者の届出のみ | 家庭裁判所の審判が必要 |
| 実親等の同意 | 養子が満15歳未満のときは法定代理人が承諾 | 実父母の同意が必要 |
| 実方との親族関係 | 存続する | 終了する |
| 戸籍の記載 | 「養子」と明記される | 「長男」「長女」等と記載。身分事項欄に民法817条の2による裁判確定の旨が記載される |
| 離縁 | 当事者の協議で可能 | 養子・実父母または検察官の請求による。家庭裁判所の審判が必要(養親からの請求不可) |
相続税法では「法定相続人の数」の計算上、養子の数に一定の制限を設けています(相法15②)。子の配偶者や孫などを養子にして基礎控除額等を増やす租税回避を防ぐため、昭和63年の税制改正で導入された規定です。
⑵ 嫡出子と非嫡出子
嫡出子は、法律上の婚姻関係にある男女間に生まれた子(婚内子)です。養子も養子縁組により養親の嫡出子となります(民法809条)。
非嫡出子は、法律上の婚姻関係にない男女間に生まれた子(婚外子)です。母子関係は出産の事実で認められ、父子関係は認知によって生じ、相続権が発生します(民法779条)。
⑶ 全血と半血の兄弟姉妹
父母の双方を同じくする兄弟姉妹を全血の兄弟姉妹、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹を半血の兄弟姉妹といいます。
| 区分 | 内容 | 相続分 |
|---|---|---|
| 全血の兄弟姉妹 | 父母の双方を同じくする兄弟姉妹 | 基準となる相続分 |
| 半血の兄弟姉妹 | 父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹 | 全血の兄弟姉妹の2分の1(民法900条四号) |
⑷ 相続の欠格
欠格事由に該当する者の相続権は、何らの手続きも経ることなく当然に失われます(民法891条)。
| 欠格事由 |
|---|
| ① 故意に被相続人または先順位・同順位の相続人を死亡させ、または死亡させようとして刑に処せられた者 |
| ② 被相続人が殺害されたことを知りながら、告発・告訴しなかった者 |
| ③ 詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし・撤回し・取り消し・変更することを妨げた者 |
| ④ 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ・撤回させ・取り消させ・変更させた者 |
| ⑤ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した者 |
⑸ 推定相続人の廃除
廃除とは、被相続人自らの請求(遺言も可)に基づき、家庭裁判所が推定相続人の相続権を剥奪する制度です(民法892条)。欠格とは異なり、被相続人の意思と裁判所の判断の両方が必要です。廃除の対象は遺留分を有する推定相続人(子・直系尊属・配偶者)に限られます。
| 廃除事由 |
|---|
| ① 推定相続人が被相続人に対して虐待をし、またはこれに重大な侮辱を加えたとき |
| ② 推定相続人にその他の著しい非行があったとき |
このセクションのポイント
- 配偶者は常に相続人。他の相続人(子・直系尊属・兄弟姉妹)と組み合わせて相続する
- 内縁関係のパートナーは民法上の相続人にはなれない
- 養子は第1順位の相続人。普通養子は実親との関係が存続するが、特別養子は終了する
- 非嫡出子は認知によって父子関係が生じ、相続権を取得する
- 相続欠格は手続き不要で当然に相続権を失う。廃除は被相続人の請求+裁判所の判断が必要
2 胎児の相続
胎児は、相続についてはすでに生まれたものとみなされます(民法886条)。ただし、死産の場合は初めから存在しなかったものとして扱われます。
| 場合 | 取り扱い |
|---|---|
| 生きて生まれた場合 | 相続開始時にさかのぼって相続人となる |
| 死産の場合 | 初めから存在しなかったものとして取り扱われる |
相続税法では、申告時点で胎児がまだ出生していない場合、他の共同相続人は胎児がいないものとして課税価格を計算し申告します。胎児が生まれた後は、法定代理人が出生を知った日の翌日から10か月以内に申告書を提出します(相基通27-6)。
このセクションのポイント
- 胎児は「すでに生まれたもの」として相続権を持つ。死産の場合のみ例外
- 相続税の申告は、出生前は胎児を除いて計算し、出生後に別途申告する
3 同時死亡の推定
海難事故や飛行機事故などで複数の家族が死亡し、死亡の時期が不明な場合は、同時に死亡したものと推定されます(民法32条の2)。同時死亡の推定が適用されると、両者の間に相続関係は生じません。
どちらが先に亡くなったかによって相続人の構成が大きく変わるため、この推定ルールは実務上も重要です。
| 死亡の状況 | 本人Aの相続人 | 子Cの相続人 |
|---|---|---|
| 本人Aと子Cが同時に死亡 | 妻B(2/3)・父親D(1/3)子Cはすでに死亡とみなされるため相続人にならない | 妻B(1/1) |
| 先に本人Aが死亡、後に子Cが死亡 | 妻B(1/2)・子C(1/2)子Cが相続人となり、その後子Cの相続が開始 | 妻B(1/1) |
| 先に子Cが死亡、後に本人Aが死亡 | 妻B(2/3)・父親D(1/3)子Cはすでに死亡しているため相続人にならない | 妻B(1/2)・本人A(1/2)本人Aが先に生存していたため相続人となる |
このセクションのポイント
- 死亡の先後が不明な場合は「同時死亡」と推定され、両者の間に相続関係は生じない
- 死亡の順序によって相続人の構成・相続分が大きく変わるため、実務上の重要なルール
4 代襲相続
代襲相続とは、相続人となるべき者(被代襲者)が相続開始以前に死亡していたり、欠格・廃除により相続権を失っていた場合に、その者の直系卑属(代襲者)が代わって相続分を受け継ぐ制度です(民法887条②・889条②)。被代襲者の死亡などにより直系卑属が不利益を受けないようにするための制度です。
⑴ 代襲相続が発生する要件
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| ① 代襲原因 | 被代襲者の相続開始以前の死亡(同時死亡を含む)・欠格・廃除のいずれか※「相続の放棄」は代襲原因に含まれない |
| ② 代襲者の資格 | 被代襲者の子であること(被相続人の直系卑属に限る) |
| ③ 代襲者の相続権 | 代襲者自身が被代襲者に対する関係でも相続権を失っていないこと |
| ④ 代襲者の存在 | 代襲者が相続開始時に存在すること |
被代襲者が被相続人と養子縁組した際にすでに生まれていた被代襲者の子は、被相続人の直系卑属とはならないため、代襲相続できません(民法727条)。
⑵ 再代襲の可否
代襲者がさらに相続開始前に死亡した場合などには、その子への再代襲が問題になります。被代襲者が誰かによって扱いが異なります。
| 被代襲者 | 代襲者 | 再代襲 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 被相続人の子 | 被相続人の孫(直系卑属) | 可(曾孫へ) | 民法887条③が適用される |
| 被相続人の兄弟姉妹 | 被相続人の甥・姪(兄弟姉妹の子) | 不可(兄弟姉妹の孫へは代襲されない) | 民法889条②は887条②を準用するのみで、再代襲を定める③を準用しない |
このセクションのポイント
- 代襲相続は、被代襲者の死亡・欠格・廃除が原因。相続の放棄では代襲は発生しない
- 代襲者は被代襲者の子(被相続人の直系卑属)に限られる
- 被相続人の子が被代襲者の場合は再代襲(曾孫まで)あり
- 兄弟姉妹が被代襲者の場合は甥・姪(一代のみ)まで。再代襲はなし
5 よくある質問(FAQ)
内縁の配偶者は相続人になれますか?
なれません。相続人となる配偶者は「法律上の婚姻関係にある者」に限られます。内縁関係(事実婚)のパートナーは、民法上の相続人にはなれません。遺言による遺贈(財産を遺言で渡す)を検討することが一般的です。
相続放棄した人の子は代襲相続できますか?
できません。代襲相続が発生するのは、相続人が「死亡」「欠格」「廃除」のいずれかに該当する場合です。相続の放棄は代襲原因に含まれないため、放棄した人の子は代襲相続人になれません。
兄弟姉妹の子(甥・姪)は代襲相続できますか?再代襲は?
兄弟姉妹が欠格・廃除・死亡した場合、その子(甥・姪)は代襲相続人になれます。ただし、甥・姪の子(兄弟姉妹の孫)への再代襲は認められていません。一方、被相続人の子が代襲者(孫)になる場合は、さらにその子(曾孫)への再代襲が認められます。
まとめ
相続人は民法により範囲と順位が定められており、配偶者は常に相続人となります。養子・嫡出子・非嫡出子はいずれも相続権を持ちますが、養子の種類(普通・特別)によって実親との関係が異なります。相続欠格は自動的に相続権が失われる制度であるのに対し、廃除は被相続人の請求と家庭裁判所の判断が必要です。また、胎児や同時死亡・代襲相続のルールを正確に把握することが、適切な相続手続きへの第一歩です。具体的な相続人の確定や手続きについては、早めに専門家へご相談ください。
相続人の確定・相続手続きでお困りの方へ
「誰が相続人になるのか」「代襲相続や欠格・廃除が絡む複雑なケース」など、相続に関するご不明点はお気軽にご相談ください。

