2025/06/06 お知らせ
【遺産相続】相続で代償金を支払うと税金がかかる?~譲渡所得税リスクとその対応法~
相続の場面では、「代償分割」という遺産の分け方がよく使われます。これは、一部の相続人が不動産などの財産を相続し、その代わりに他の相続人へ金銭を支払う方法です。
一見合理的に見えるこの手法ですが、実務上は注意が必要です。税務署が「形式上は代償分割でも、実態は換価分割だ」と判断した場合、譲渡所得税が課されるおそれがあります。
今回は、代償金支払いと税金にまつわるリスクや対応策をQ&A形式で解説します。
Q1. 代償分割とは何ですか?
A. 特定の相続人が不動産などを取得し、他の相続人に代わりに金銭を支払う方法です。
たとえば長男が実家を相続し、他の兄弟に1,000万円ずつ支払うケースなどが該当します。財産を売却せずに分割できる点がメリットですが、支払資金の出どころによって税務リスクが生じることもあります。
Q2. 代償金の「受け取る側」に税金はかかりますか?
A. 相続税の対象になりますが、贈与税や所得税はかかりません。
代償金は相続財産の一部と見なされるため、通常は相続税だけが課税されます。贈与や雑所得として扱われることはなく、安心して受け取ることができます。
Q3. 代償金を「支払う側」は課税されることがありますか?
A. 相続税は控除されますが、譲渡所得税に注意が必要です。
代償金を支払う相続人は、その金額を相続税の計算上控除できます。ただし、不動産などを売却して資金を得た場合には、その売却益に対して譲渡所得税(所得税+住民税)が課される可能性があります。
Q4. 税務署に「換価分割」と判断されたらどうなりますか?
A. 譲渡所得税が課される場合があります。
以下のような場合には、形式が代償分割でも、税務署が「実質は換価分割」と判断する可能性があります。
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代償金の金額が遺産分割協議書に記載されていない
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代償金の支払いが不動産の売却益を前提にしている
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売却後すぐに支払いが行われた
こうした事実関係があると、「売却して現金を分けただけ」と見なされ、代償分割では課税されなかった譲渡所得税が課税されることになります。
代償分割は、相続財産を柔軟に分ける有効な方法ですが、形式と実態がずれていると、税務署から課税リスクを指摘される恐れがあります。譲渡所得税の課税のような不測の事態を避けるには、税理士や弁護士と事前に十分に協議することが大切です。
弊所では、相続実務に精通した弁護士が、税理士とも連携しながら、適切な分割方法をご提案しております。
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※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています。