解決事例・コラム

2025/11/11 解決事例・コラム

退職代行は誰に頼むべき? 「退職だけなら弁護士不要」という主張を弁護士が解説

退職代行は誰に頼むべき?
「退職だけなら弁護士不要」という
主張を弁護士が解説

最終更新日:2025年11月11日

 

 

退職代行をめぐる最近の話題

近年、「退職代行サービス」という言葉を耳にする機会が増えました。SNSなどでは「退職だけなら交渉は不要だから弁護士に頼む必要はない」「弁護士に依頼すると高い」といった宣伝も見られます。

しかし、これらの主張には注意が必要です。一見シンプルに思える「退職の意思を伝えるだけ」という行為でも、実際には法的な論点が潜んでいることが少なくありません。

「退職だけなら交渉不要」論の落とし穴

確かに、単純に「退職します」と意思を伝えるだけであれば、法的な「交渉」には当たらず、弁護士でなくても行うことは可能です。しかし、「本当にそれだけで済むのか」を判断できるのは、法的知識を持つ弁護士だけです。

たとえば、退職金や残業代の支払い条件について、会社と見解が食い違った場合、退職代行業者には対応する権限がありません。弁護士でない者が、依頼者の代理として法的なやり取りを行うことは「非弁行為」とされ、法律で禁止されています。そのため、トラブルに発展した場合は、結局弁護士に依頼し直すことになり、二重の手間と費用が発生してしまうのです。

また、依頼者本人が「自分には特に法的問題はない」と思っていても、実際には未払い残業代や有給休暇の未消化、パワハラなど、法的に請求できる権利が見つかることは珍しくありません。中には、退職代行を希望して相談に来られた方が、結果的に数百万円規模の未払い残業代を回収できたケースもあります。

退職の裏に隠れた法的請求の可能性

たとえば、有給休暇が40日残っていれば、約2か月分の給与を受け取ってから退職できることがあります。また、会社側の不当な扱いがあれば、慰謝料や損害賠償の請求も視野に入ります。

もちろん、「とにかく早く辞めたい」「お金は要らない」という判断をされる方もいます。しかし、権利を知らないまま諦めてしまうのと、理解した上で選択するのとでは大きな違いがあります。

医療にたとえるなら、退職代行業者は「診察をせずに薬を出すような行為」といえます。法的な問題の有無を確認せずに退職を進めてしまうことは、思わぬ損失を招くおそれがあります。

「弁護士に頼むと高い」は本当か?

「弁護士に頼むと高額になる」という声もありますが、実際にはそうとも限りません。

もしトラブルに発展すれば、退職代行業者では対応できず、結局弁護士に追加で依頼する必要が生じます。そうなれば、結果的に費用も時間もかかってしまいます。

弁護士に依頼すれば、最初から最後まで一貫した対応が可能です。交渉が必要になった場合もそのまま対応できるため、安心して任せることができます。「退職を伝えるだけで済む」職場であれば、そもそも退職代行自体が不要な場合もあるでしょう。まずは弁護士に相談し、本当に必要なサポートを見極めることが大切です。

弁護士に相談する価値

退職は人生の大きな転機であり、同時に法律関係が複雑に絡む場面でもあります。「退職の意思を伝えるだけ」と思っていても、未払い賃金や有給休暇の消化、慰謝料の請求など、見落とせば大きな損失につながる要素が多くあります。

退職代行業者を利用する前に、一度弁護士に相談してみてください。自分の状況にどのような権利や選択肢があるのかを知ることで、より納得のいく形で新たなスタートを切ることができるはずです。

ご相談のご案内

弊所では、退職代行をはじめとする労働問題全般に関するご相談を承っております。
「会社を辞めたいがトラブルになりそう」「未払い残業代や有給の扱いが不安」といった場合は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

 

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