2026/01/29 解決事例・コラム
相続の使途不明金:基礎と実務をわかりやすく解説
相続の使途不明金:
基礎と実務をわかりやすく解説
最終更新日:2026年1月23日
使途不明金が見つかる典型場面と、なぜ揉めるのか
相続の使途不明金が見つかる典型は、通帳や取引履歴を確認したところ、多額の出金があるのに使い道が分からない場合です。
相続手続の早い段階で判明することもあれば、相続税申告後の税務調査で出金の整合性を問われてから表面化することもあります。
近年は、税務当局が金融機関に対する情報照会をオンラインで行う仕組みの整備が進み、預貯金の動きは従来より把握されやすい方向です。一次資料として、デジタル庁の公表資料も参照できます。
実務では、まず「いつ・いくら・どの口座から」出金されたのかを客観的に確定し、そのうえで説明と証拠を積み上げることが重要です。相談窓口としてはお問い合わせフォームもご利用ください。
制度面の背景は、例えばデジタル庁資料(民間・事業者DX等の説明資料)で概要を確認できます。
このセクションの要点
- 発見契機は通帳・取引履歴の精査、または相続税調査での指摘が典型です。
- 近年は情報照会のオンライン化等により、預貯金の動きが説明を求められやすい環境です。
- 相続の使途不明金は、感情論より先に「時系列と金額の確定」から着手します。
「使途不明金」とは何か
ここでいう「使途不明金」とは、預貯金口座から引き出された金銭について、支払先・購入物・時期・金額などの説明ができない、または説明が争いになる状態を指します。
重要なのは、「引き出された事実」だけで直ちに誰かの使い込みと断定できない点です。生活費、医療費、介護費、葬儀関係の準備など、正当な支出である可能性もあります。
一方で、説明がつかないまま金額が大きいと、遺産分割の調整だけでなく、税務(相続財産の把握)や紛争(返還請求)にも波及しやすくなります。
このセクションの要点
- 使途不明金は「説明できない状態」の呼称で、直ちに不正を意味しません。
- 正当支出の可能性があるため、断定よりも資料と事情の整理が先決です。
- 相続の使途不明金は、遺産分割と税務・紛争の両面に影響し得ます。
預貯金のチェックが強まっている背景
相続税の調査では、申告漏れとなった相続財産の内訳として「現金・預貯金等」の比率が高い年があることが示されています。
このため、預貯金の入出金の整合性(名義と実質、資金移動の理由)は重点的に確認されやすい領域です。実際の統計・状況は国税庁が公表している資料で確認できます。
名義預金(借名預金)が絡む場合
口座名義が相続人等であっても、通帳・印鑑の管理や資金の出所などから、実質的に被相続人の財産として判断される場合があります(実態判断)。
この点は、相続税申告の組み立てに直結するため、早期に「管理状況」「入出金の目的」「贈与の意思表示の有無」等を点検することが重要です。
このセクションの要点
- 相続税調査では現金・預貯金の整合性が確認対象になりやすい傾向があります。
- 名義預金は実態判断となるため、管理状況や資金の出所の説明が重要です。
- 相続の使途不明金がある場合、税務上の論点(名義・実質・資金移動理由)も早期点検が有効です。
使途不明金の4つの発生原因
実務で混乱しやすいのは、「何が起きたか」と「法的にどう評価されるか」が混ざる点です。原因を切り分けると、手続の設計がしやすくなります。
(1)被相続人自身が引き出して使った
本人が生活費等に使っていたなら、分割時点で残っていない金銭は原則として現存遺産に入りません。ただし、使途資料が乏しいと、他の相続人が納得できず紛争化しやすい類型です。
(2)相続人が被相続人のために引き出した(立替)
介護費・医療費・施設費など被相続人の利益のための立替であれば、領収書や請求書で説明しやすい一方、証憑が散逸していると疑念が生じます。証拠の確保が鍵になります。
(3)相続人が同意のもとで自分のために引き出した
同意があっても、生前贈与(遺産の前渡し)として特別受益の調整対象となる場面があります。加えて、相続税の計算上は生前贈与加算の対象期間が問題となり得ます。
制度の一次情報として国税庁「贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)」を参照できます。
(4)相続人が無断で引き出した(生前・死後を含む)
無断引出しが疑われる場合、遺産分割とは別に返還(不当利得返還請求等)を検討することがあります。遺産の範囲が固まらず、手続が長期化しやすいのが特徴です。
原因整理のポイント
- 出金の評価は「本人使用」「立替」「同意あり」「無断」の切り分けで見通しが立ちます。
- 同意あり出金は、特別受益や税務(生前贈与加算)の論点に接続します。
- 相続の使途不明金は、原因類型により「遺産分割で調整」か「別手続で返還」かが分岐します。
遺産分割での位置づけ(現存遺産と取得調整、合意の作り方)
遺産分割は、原則として分割時に存在する遺産(現存遺産)を対象に進みます。そのため、引き出されて費消され、分割時点で存在しない金銭は形式的には分割対象に乗りにくい側面があります。
もっとも、相続人間の公平の観点から、当事者全員が合意できるなら、使途不明金を含めて取得額を調整する(実質的に清算する)解決が選択されることがあります。
合意形成では、まず「対象期間」「対象金額」「説明できる部分とできない部分」を区分し、合意できる範囲を確定してから、争点部分の扱い(調停に委ねるか、別手続を検討するか)を設計します。
遺産分割での整理の要点
- 現存遺産が原則で、費消済み金銭は分割対象に乗りにくい構造があります。
- ただし当事者全員の合意があれば、取得額の調整として実質清算する方法があります。
- 相続の使途不明金は、合意できる部分を先に固め、争点を後段で交通整理するのが実務的です。
遺産分割前に資金が必要なとき(民法909条の2の払戻し制度)
被相続人死亡後に口座が凍結されると、当面の生活費や葬儀費用の支払いに支障が出ることがあります。
この点について、遺産分割前でも一定額を単独で払い戻せる制度が設けられています(民法909条の2)。条文はe-Gov法令検索(民法909条の2)で確認できます。
払戻しは「最終確定」ではなく「後日調整」が前提
払戻し可能額には計算式と上限があり、金融機関ごとの運用も踏まえて手続します。制度の概要は全国銀行協会リーフレットで整理されています。
この払戻しは、最終的な取り分を確定させるものではなく、後日の遺産分割で精算・調整される前提です。
制度利用の要点
- 遺産分割前の払戻し制度は、当面資金の確保のための仕組みです。
- 条文と運用資料を確認し、上限・計算方法を踏まえて申立てます。
- 相続の使途不明金の整理と並行しても、払戻しは後日の調整が前提です。
争いになった場合の進め方
争点が「使途不明金か否か」「誰の利益の支出か」「無断か同意か」に及ぶと、遺産分割手続(調停等)だけで整理しきれず、返還請求を別手続で検討する局面があります。
実務対応は「事実確定」と「証拠化」から逆算する
感情と証拠がずれたまま進むと長期化しやすいため、次の順で整理すると実務が安定します。
- 期間と金額を確定:取引履歴を取得し、問題となる出金を時系列化する
- 使途を仮説立て:医療・介護・生活費・贈与・立替・家族間貸借などに分類する
- 証拠を集める:領収書、請求書、家計簿、メモ、当時のメールやメッセージ記録など
- 同意の有無を切り分け:同意がある場合は法的評価(贈与・精算等)が変わる
- 税務影響を確認:名義預金、生前贈与加算、修正申告の要否を早期点検する
- 手続を交通整理:遺産分割で進める部分と、別手続で争う部分を分けて設計する
税額が増える可能性がある場合は、延滞税や加算税の論点も視野に入ります。一次情報として、国税庁の延滞税についてや加算税制度の改正のあらましも参照してください。
紛争化した場合の要点
- 遺産分割と返還請求は、争点に応じて手続を分ける設計が必要です。
- 時系列化と証拠化が進行管理の土台になり、感情面の衝突を抑えやすくなります。
- 相続の使途不明金は、税務(延滞税・加算税等)の影響も早めに点検します。
まとめ
使途不明金の局面は、事実が固まらないまま評価だけが先行すると対立が深まりやすい傾向があります。
まずは取引履歴等で「期間・金額・回数」を確定し、原因類型(本人使用/立替/同意あり贈与/無断)に切り分けたうえで、遺産分割で調整できる範囲と、別手続で争う範囲を交通整理することが実務上の近道です。
最終整理の要点
- 時系列と金額の確定が最優先で、次に原因類型へ切り分けます。
- 遺産分割で合意できる範囲を先に固め、争点は後段で手続分岐させます。
- 相続の使途不明金は、税務・紛争の両面を見据えた設計が解決を早めます。
専門家がサポートできること
- 取引履歴・資料の収集と時系列整理、争点の可視化
- 原因類型に応じた法的評価(遺産分割での調整設計、返還請求の検討)
- 名義預金や生前贈与加算を含む税務影響の早期点検と、手続全体の交通整理
参考資料(公開ページ・一次情報)
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