解決事例・コラム

2026/02/20 解決事例・コラム

共同親権の導入と民法大改正: 離婚を考えている方が押さえるべき令和8年改正のポイント

共同親権の導入と民法大改正:
離婚を考えている方が押さえるべき令和8年改正のポイント

最終更新日:令和8年(2026年)2月20日

 

本記事のポイント

■ 令和8年改正で押さえるべきポイント

① 共同親権は選択制
単独親権も引き続き選択可能です。
② 法定養育費(月2万円)
令和8年4月1日以降の離婚から適用されます。施行前の離婚には適用されません。
③ 財産分与の請求期間延長
離婚後2年→5年に延長(施行後の離婚のみ)。施行前は従来どおり2年となります。
④ 親子交流ルールの明文化
婚姻中別居時のルールが整備され、裁判手続中の「試行的実施」制度も新設されました。

はじめに – 離婚後の親権は「単独のみ」から「共同も選べる」へ

 共同親権の導入をはじめ、令和6年(2024年)5月に成立した民法等改正法が、令和8年(2026年)4月1日にいよいよ施行されます。

 「離婚したら、どちらかが親権を持つ」。長らく日本の常識だったこのルールは、令和8年4月1日以降、離婚後の親権者について共同親権も選択できる仕組みへと変わります(単独親権がなくなるわけではなく、選択肢が広がります)。

 今回の改正は親権のあり方だけにとどまらず、養育費の請求方法財産分与の手続き、そして子どもと別居親との交流のルールまで、離婚にまつわる法律の枠組みを幅広く整備するものです。

 本コラムでは、今回の改正のなかでも特に生活に直結する4つのテーマ──①共同親権の導入、②法定養育費(月2万円)の新設、③財産分与の請求期間延長、④親子交流のルール整備──について、わかりやすく解説します。大切なお子さんの養育環境と離婚後の生活設計のために、まずは現状を確認し、必要な場面では専門家のサポートも活用しながら、無理のない準備を進めていきましょう。

共同親権の導入 – 「どちらかが持つ」から「ともに担う」も選べる

 これまでの民法では、離婚後は必ず父母の一方だけが親権者となる「単独親権」しか認められていませんでした。今回の改正により、離婚後も父母双方が親権者となる共同親権を選択できるようになります。

親権者はどうやって決まるのか

 協議離婚の場合は、父母が話し合い、共同親権にするか単独親権にするかを定めます。協議が整わない場合や裁判離婚の場合は、家庭裁判所が父母それぞれの意見を聴いた上で、子どもの利益の観点から判断します。その際、子どもの意思を把握するよう努めることも求められています。

「必ず単独親権」としなければならない場合(要件)

 家庭裁判所は、次のいずれかに該当する場合、必ず単独親権を定めなければならないとされています(法務省)。

虐待のおそれがあると認められるとき
DVのおそれその他の事情により、父母が共同して親権を行うことが困難と認められるとき
共同親権と定めることにより、子の利益を害すると認められるとき

 また、DVについては「殴る・蹴るなどの身体的暴力に限られない」旨が示されています。具体的にどの行為類型が該当するかは個別の事情によりますので、実際には事情に応じた判断が求められます。

共同親権になった場合、日常生活はどうなる?

 共同親権になっても、すべての決定に双方の同意が必要となるわけではありません。「監護教育に関する日常の行為」については、父母の一方が単独で行えるとされています。

 法務省では「日常の行為に当たる例、当たらない例」として、以下のような場合を挙げています。(法務省)

一方が単独で行える行為 双方の同意が必要な行為
食事・服装の決定、習い事、通常のワクチン接種、短期旅行、高校生のアルバイト許可など 子どもの転居、進学先の決定、財産管理(預金口座の開設など)、心身に重大な影響を与える医療行為など
⚠ 急迫の事情がある場合:DVや虐待からの避難、緊急の医療行為など「急迫の事情」があるときは、一方の親が単独で決定できることが明記されています。

すでに離婚して単独親権になっている場合は?

 改正法の施行によって、自動的に共同親権へ変更されることはありません。施行後に個別の申立て等によって変更が問題となる場合もありますが、制度の運用は事案ごとの判断となります。

■ 共同親権の導入に関するまとめ

① 選択制
共同親権は「選択制」。単独親権も引き続き選択可能です。
② DV・虐待がある場合
上記DV等のおそれがある場合は必ず単独親権となります。
③ 共同親権下の単独行為
共同親権下でも、日常行為なら単独の監護行為が可能です。
④ 施行前の離婚
単独親権が維持されますが、変更の申立が可能になります。

法定養育費(月2万円)の新設 – 「取り決めがなくても請求できる」

 これまでは、父母の協議や家庭裁判所の手続きで養育費の額を取り決めなければ、実務上、養育費の確保が進まないケースが少なくありませんでした。

 今回の改正で新設された法定養育費は、離婚の際に養育費の取り決めをしていなくても、離婚のときから子ども1人当たり月額2万円を請求できる制度です。ただし、あくまで取り決めがない場合の補充的な制度であり、収入に応じた適正額の取り決めを正式に行うことが、引き続き推奨されています。

法定養育費の終期

 法定養育費は、次のいずれか早い日まで発生し続けます。

父母が養育費の取り決めをした日
家庭裁判所の審判が確定した日
子どもが18歳に達した日

払われなかった場合の差押え

 法定養育費の支払いがなされない場合は、差押えの手続きを申し立てることができます。

注意点:施行前の離婚には適用されない

 この制度は令和8年(2026年)4月1日以降に離婚したケースにのみ適用されます。施行前に離婚した方は、父母の協議か家庭裁判所の手続きによって養育費を取り決める必要があります。

養育費の先取特権(私的取り決めへの効力強化)

 法定養育費とは別に、今回の改正では養育費債権に先取特権が付与されました。これにより、一定額の範囲では、債務名義がなくても父母間の取り決め文書に基づいて民事執行(差押え)を申し立てられる仕組みが整備されます(上限額は子1人あたり月8万円の方針)。なお、経過措置として、施行前にすでに取り決めをしている場合でも、施行後に生ずる養育費について先取特権が及ぶ旨が示されています。

■ 法定養育費の新設に関するまとめ

① 取り決めていなくても請求が可能に
取り決めがなくても月2万円を請求できます。
② 終期
子が18歳に達するか、正式な取り決めがなされるまで発生し続けます。
③ 未払いの場合
差押え申立てが可能になりました。
④ 先取特権
私的取り決め文書でも差押えが可能になりました。(上限月8万円)。

財産分与の請求期間が「2年」から「5年」へ

 財産分与とは、婚姻中に夫婦が共に築いた財産を離婚の際に分け合う制度です。これまでは離婚後2年以内に家庭裁判所へ申し立てなければ権利が消滅してしまう運用でしたが、今回の改正により、この請求期間が離婚後5年に延長されます(法務省)。

なぜ延長が必要だったのか

 離婚直後は感情的な混乱や経済的不安が大きく、財産分与の請求まで手が回らない方も少なくありません。特に、配偶者が財産を隠蔽していた事実が後になって判明するケースでは、2年という期間では対応が難しい事態が生じていました。5年への延長は、こうした実態を踏まえたものです。

考慮要素の明確化

 今回の改正では、財産分与において考慮すべき要素も明文化されました。財産の取得・維持への寄与の程度は原則として2分の1ずつと整理されており、専業主婦・主夫として家事育児を担ってきた方の貢献も、就労と同様に評価され得るという趣旨に沿ったものとなっています。

重要な経過措置

 令和8年(2026年)3月31日以前に離婚した場合、財産分与の請求期間は従来どおり離婚後2年です。施行前に離婚される方は、期限に十分ご注意ください。

■ 財産分与の請求期間延長に関するまとめ

① 請求期間の延長
離婚後2年→5年に延長(施行後の離婚から適用)
② 施行前の離婚は従来どおり
令和8年3月31日以前の離婚は2年のため注意が必要です。
③ 考慮要素の明文化
財産分与の考慮要素が明文化され、寄与割合は原則2分の1と整理されました。

親子交流のルール整備 – 「安全・安心な面会」を法的に担保

 これまで民法には、婚姻中に父母が別居している場合の親子交流に関する規定がありませんでした。今回の改正により、①父母の協議により定める、②協議が整わない場合は家庭裁判所が定める、③その際は子どもの利益を最優先に考慮する、という枠組みが明確化されました(法務省)。

家庭裁判所での「試行的実施」制度の新設

 調停・審判の手続き中に、実際に親子交流を試験的に行う「試行的実施」の制度が新たに設けられました。裁判所が日時・場所・方法などの条件を定めた上で実施し、その結果を踏まえて調停の成立や審判に向けた調整を進めていく仕組みです。子どもの心身の状態に照らして相当でない場合は試行的実施は促されず、子どもの意見は年齢や発達の程度に応じて考慮されます。

祖父母など「父母以外の親族」との交流も可能に

 今回の改正では、祖父母・兄弟姉妹など父母以外の親族と子どもとの交流についても新たなルールが設けられました。子どもの利益のため特に必要があるときは、家庭裁判所が父母以外の親族と子どもとの交流を実施するよう定めることができます。

 また、父母の一方が死亡または行方不明になった場合など、ほかに適当な方法がないときには、祖父母・兄弟姉妹・過去に子どもを監護していた親族が自ら家庭裁判所に申し立てることができるようになります。

■ 親子交流のルール整備に関するまとめ

① 婚姻中別居にも明文ルール
別居時の親子交流の定め方が法律上明確化されました。
② 試行的実施制度の新設
裁判手続き中に実際の交流を試験的に実施できる仕組みが創設されました。
③ 父母以外の親族との交流
祖父母・兄弟姉妹など父母以外の親族との交流についてもルールが整備されました。

まとめ

 共同親権の選択制導入、法定養育費の新設、財産分与請求期間の延長、親子交流のルール整備と、離婚をめぐる法律の枠組みは令和8年4月1日を境に大きく変わります。特に経過措置のある制度(財産分与・法定養育費)については、離婚のタイミングによって適用される制度が異なるため、注意が必要です。

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専門家がサポートできること

■ 弊所にご相談いただける主な内容

① 親権の選択整理
共同親権・単独親権の選択に関する判断整理
② 離婚協議・調停の設計
親権・養育費・財産分与の一体的設計
③ 財産分与の請求
離婚後の時効管理を含む財産分与の手続支援
④ DV・虐待案件の対応
単独親権確保のための手続支援
⑤ 親子交流(面会交流)
条件設定・調停対応

参考資料一覧

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